南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-82-心雑音が著しく,就職に影響があるなど社会的に不利なもの,を挙げている5)。今回の症例ではいずれもこれらに当てはまらず保存的療法となっている。 近年のMSCTの多列化,高速化やワークステーションの進歩に伴い冠動脈疾患の検査において冠動脈CTAの有用性が向上している。冠動脈CTAによる冠動脈狭窄の診断能は単一施設からの成績の集計では感度89%,特異度96%,陽性的中率(PPV)76%,陰性的中率(NPV)98%と報告されている。冠動脈CTAでは特にNPVが高く,CTで有意狭窄を認めない場合,冠動脈狭窄はほぼ否定される6)。近年冠動脈CTAの撮像件数は増加しており,今後冠動脈瘻が冠動脈CTAで偶然発見される機会も増加するものと思われる。冠動脈CTAでは通常の水平断像に加え,ワークステーションで作成されたvolume rendering(VR),angiographic view,curved planar reconstruction等の再構成画像が用いられ,冠動脈瘻を含む冠動脈奇形の診断には特にVR画像が有用である7)。VR画像では心臓全体を様々な角度から観察することが可能であり,冠動脈の解剖を立体的に観察することが可能である。ただし,VR画像の作成過程では冠動脈を観察する際に障害となる骨や左心耳,肺動静脈等が削除されるが,この際に診断に重要な構造まで削除されている場合がある。特に近年ワークステーションの進歩に伴い,心臓の抽出や冠動脈の抽出が半自動的に行われるようになってきているが,冠動脈瘻でみられる異常血管については全体が抽出されない場合もありうる。また,冠動脈瘻の流入部として多い肺動脈は左冠動脈と重なってしまうため,ルーチンの再構成画(図4) 冠動脈CTA(症例1と同症例)AはルーチンでのVR画像。肺動脈や左心耳が削除され,冠動脈起始部が観察可能であるが,Bで描出されている冠動脈瘻も削除されている。

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