南予医学雑誌 第17巻
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井上、他:冠動脈瘻の3例南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-81-(図3) 冠動脈CTA(症例3)右冠動脈#1より分岐する異常血管が肺動脈幹へ流入する。冠動脈先天性奇形である。先天性心疾患における割合が0.2~0.4%と稀で,他の心疾患の精査で偶然に発見されることが多いとされている。冠動脈造影検査を受けた患者の0.3~0.8%に認めるとされている1)。当院での過去5年間(2011年8月17日~2016年8月17日)の冠動脈CTAの検討では冠動脈瘻は1036件の検査中6例で,0.58%であった。これは過去の血管造影での報告に一致するものと思われた。Levinらの報告では異常血管の起始部は右冠動脈(50%),左冠動脈(43%),右冠動脈と左冠動脈の両方(5%)の順に多く,流入する部位は右心系に多く右心室(41%),右心房(26%),肺動脈(17%),冠静脈洞(7%),左心房(3%),上大静脈(1%)の順である2)。 冠動脈瘻は短絡量が少量の場合は無症状に経過することが多いが,症状は加齢とともに出現する傾向があり,呼吸困難,息切れ,胸痛,下腿浮腫,動悸など多岐にわたる。また,約半数の症例で心電図や胸部X線の異常を認め,連続性雑音を認める症例もある3)。 冠動脈瘻の治療は,保存的療法,経皮的カテーテルによるコイル塞栓術,外科的手術療法の3つに分類される。コイル塞栓術は,外科的治療と比較し侵襲が少ないため近年積極的に施行されている。コイル塞栓術のよい適応となるのは瘻管が単一で細い,大きな分枝がない症例とされている4)。外科的治療の適応としては今野らが1.現在無症状でも,短絡率30%以上のとき,2.心電図に虚血性変化または負荷の徴候を認めるもの,3.肺高血圧またはうっ血性心不全の進行が予測されるもの,4.感染性心内膜炎の既往のあるもの,5.冠動脈瘻に瘤状形成を認め,破裂の危険性があるもの,6.

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