南予医学雑誌 第17巻
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井上、他:冠動脈瘻の3例南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-79-はじめに 冠動脈瘻は冠動脈と心内腔,あるいは心臓周囲の大血管との間に交通路を形成する稀な冠動脈奇形である。症状が乏しいことが多いため,他の心疾患の精査の際に偶然見つかる場合が多いとされている。また,近年multislice computed tomography(MSCT)の発展に伴い,冠動脈CTAの件数が増加しており,冠動脈CTAでの発見も報告されている。 今回我々は冠動脈疾患のスクリーニングのため施行された冠動脈CTAにて偶然発見された冠動脈瘻を3例経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する。症例1:70歳代 女性主 訴:安静時胸痛現病歴:安静時の胸痛のため,近医より紹介。冠動脈スクリーニングのため冠動脈CTAが施行された。冠危険因子:高血圧(‒),脂質異常症(+),糖尿病(‒),喫煙(‒)冠動脈CTA(図1): 左冠動脈#6,右冠動脈#1より分岐する蛇行した異常血管を認め,肺動脈幹への流入あり。冠動脈瘻と診断した。  冠動脈には石灰化を認めるものの有意狭窄は認めなかった。その後の経過: 冠動脈瘻については症状の原因とは考えにくいため,現在経過観察されている。症例2:70歳代 男性主 訴:冠動脈スクリーニング現病歴:腹痛にて当院受診。その際に冠危険因子(喫煙)あり。冠動脈スクリーニングのため循環器内科に紹介され,冠動脈(図1) 冠動脈CTA(症例1)左冠動脈#6, 右冠動脈#1より分岐する蛇行した異常血管が肺動脈幹へ流入する。

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