南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-68-緒言 咀嚼筋腱・腱膜過形成症は,咬筋腱膜および側頭筋腱などの過形成による硬性の開口障害を呈する疾患である1)2)。しかし,その病態や診断基準が不明確であり,臨床的特徴から緩徐に進行した硬性開口制限と最大開口時に咬筋前縁に硬く突っ張る索状構造物を触知することが診断の根拠となり,一部の患者では特徴的なsquare mandible様顔貌を呈するとされている3)。画像診断についてはMRIが最も咬筋腱膜描出能に優れており,腱膜の把握にはMRIによる検索が必須であると考えられている4)。  咀嚼筋腱・腱膜過形成症の2症例に対して1.5T-MRIおよび3.0T-MRIにて撮像を行い,異なる磁場強度における咬筋腱膜描出能の比較・検討を行ったので,その概要を報告する。症例1患 者:42歳,女性初 診:2014年1月中旬主 訴:開口障害既往歴:気管支喘息家族歴,生活歴:特記事項なし現病歴:以前より右側顎関節にクリックを自覚するも放置していた。約2か月前から開口障害が出現してきたために精査・加療目的に当科を受診した。現 症:全身所見:身長160㎝,体重56㎏で栄養状態は良好であった。局所所見:顔貌はsquare mandible様で,両側咬筋肥大を認めた。開口時にオトガイ部の右側への偏位が認められた。自力最大開口量は22㎜であった。画像所見:パノラマX線写真にて筋突起の過長は認められなかった。単純CT写真にて両側下顎頭の形態的変化や下顎頭と顎関節硬組織との骨性癒着は認められなかった(写真1)。顎関節MRIにて右側顎関節関節円板の前方転位が認められた(写真2)。臨床診断:右側顎関節関節円板前方転位処置および経過:右側にピボットを付与したスプリントを装着し約2ヵ月間スプリントを使用したところ自力最大開口量は25㎜となった。しかし,依然開口障害が認め(写真1)初診時画像単純CT写真両側下顎頭に形態的変化は認められない。

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