南予医学雑誌 第17巻
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向井、他:PD後の仮性動脈瘤破裂の1例南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-63-に対する治療として,従来は開腹手術が主に行われてきたが,近年はInterventional Radiology(以下IVR)による塞栓療法が第一選択となることが多い2,3) 。塞栓療法は止血率,周術期死亡率等について良好な成績を誇る3)が ,一方で腹部臓器虚血を発症する可能性も存在する1)。 本症例では胃十二指腸動脈断端の仮性動脈瘤破裂に対し,まずIVRでの治療を試みたが腹腔動脈の閉塞があり,総肝動脈に選択的カテーテル挿入することができなかった。腹腔動脈起始部の狭窄・閉塞は腹部血管造影検査上の12.5%~49.7%にみられ4) ,PD症例の2%~7.6%に合併するといわれる5)が,その中でも重度の血行障害を伴い加療が必要となるものは限られる。腹部内臓動脈の閉塞または狭窄の原因として動脈硬化や血栓症,塞栓症,大動脈炎,線維筋性異形成などのほかに横隔膜の正中弓状靱帯や腹腔動脈周囲交感神経線維による圧迫が挙げられる6)。腹腔動脈の起始部閉鎖の原因が正中弓状靱帯による圧迫の場合,腹腔動脈起始部が鉤状に変形する“hooked appearance” (靱帯の頭側からの圧迫による鉤状変形)が特徴的である。一方,石灰化を伴う同心性の狭窄は動脈硬化によるものを示唆する。原田らは腹腔動脈起始部閉塞を伴うPD症例の英文報告を検討し,主な閉塞の原因は動脈硬化(42%),正中弓状靱帯による圧迫(29%)であったと報告している7)。本症例では腹腔動脈起始部は術前CT検査において狭窄はみられるものの開存していた。そのため術前より腹腔動脈起始部を正中弓状靭帯が圧迫しており,そこに膵液漏の炎症が波及することにより肥厚・硬化し,腹腔動脈が閉塞したものと考えられた。 また本症例では仮性動脈瘤破裂に対し,まずIVRでの治療を試みたが不成功であっため手術的に対応する必要に迫られた。し(図6)再手術後に造影CT検査を施行し動脈の走行を確認した。       左:右横隔膜下動脈により肝血流は維持されていた。    右:脾への血流は上腸間膜動脈からの側副血行路経由で維持されていた。

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