南予医学雑誌 第17巻
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向井、他:PD後の仮性動脈瘤破裂の1例南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-59-序言 膵頭十二指腸切除術(以下PD)後の腹腔内出血は,致命的になり得る重大な合併症の一つである。今回我々は,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後に発症した腹腔動脈閉塞を伴う仮性動脈瘤破裂に対し,後腹膜経路手術が有用であった1例を経験したため,文献的考察を加え報告する。症例症 例:63歳,男性。主 訴:健診異常。既往症:高血圧症,腰痛症,虫垂炎術後,前立腺癌術後現病歴:健康診断にて十二指腸に腫瘍性病変を指摘されたため,精査加療目的に当院紹介となった。入院時現症:身長159㎝ 体重66㎏BMI:25。9kg/㎡ 入院時検査所見:血液検査では異常を認めず, CEA:3。4ng/mL, CA19-9:12。5U/mLと腫瘍マーカーも正常であった。上部消化管内視鏡検査:上十二指腸角に径約3㎝程度の周堤をともない,内部陥凹した2型腫瘍を認めた(図1)。生検を施行し,adenocarcinomaと診断した。腹部造影CT所見:十二指腸に造影効果をもつ結節様陰影を認めた。明らかな遠隔転移を認めなかった。術前診断:十二指腸癌,T2(MP),N0,M0,cStageⅠと診断した。手術所見:全身麻酔下に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。再建はⅡ法にて行い,膵は炎症や萎縮,線維化などの異常を認められず,膵空腸吻合はBlumgart変法を用いた。手術時間は7時間21分,出血量は283gであった。(図1)上部消化管内視鏡検査にて径約3㎝程度の周堤をともない, 内部陥凹した2型腫瘍を認めた。         

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