南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-54-緒言 腎腫瘍は無症状で発見されることがほとんどで,自然破裂を契機に発見されることがあるが頻度は高くない1)2)。今回腹痛で発症しMRIにて診断に至った腎腫瘍内出血を経験したので報告する。【患 者】63歳,男性【主 訴】右側腹部痛【既往歴】喘息, 高血圧,腎機能障害のため近医通院中。右加齢黄斑変性のため当院眼科通院中。【アレルギー】喘息,サバ(蕁麻疹)【現病歴】 来院約2時間前の朝5時から右側腹部痛を自覚して目覚め,痛みが持続するため当院救急外来を独歩にて受診した。【現 症】身長165㎝,体重75.0㎏,BMI27.5体温36.8℃,血圧137/93mmHg, SpO2 100% room air右側腹部に2-3横指程度に腫瘤触知,右側腹部を中心とした圧痛や右下位肋骨圧痛を認めた。Murphy sign, Tapping pain, Heel drop sign, CVA tendernessはいずれも陰性であった。【来院時検査所見】血液検査(図1):軽~中等度の胆道系酵素の上昇,WBCの上昇,CRP陰性を認めた。腎機能障害を認めたが,ベースの腎機能は不明であった。単純CT(図2):両腎に多発性の嚢胞,右腎に多結節状の腫瘤像,傍大動脈リンパ節の腫大,多数胆石を認めた。胆嚢の腫大,胆嚢壁の肥厚,総胆管・肝内胆管の拡張,尿管結石はいずれも認めなかった。【経 過】 軽度炎症反応,胆道系酵素の上昇と多数胆石の存在より,胆石発作,胆嚢炎の可能性を考え,消化器内科,外科にコンサルトし,MRCPにて精査する方針となった。MRCPでは,落下胆石や胆道の異常を認めなかった。一方,腎には多数の大小様々な(図1)

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