南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-50-(図3)胸腹部造影CT検査(矢状断)Aorta-SMA angle 19°かつAorta-SMA distance 6.0mmより,SMA症候群と診断確定。の測定が可能8)であり,低侵襲かつ低費用という利点を持つ。 本症例では高校3年生の時に尿蛋白陽性を指摘されていたことも重要である。SMA症候群では,左腎静脈がSMAとAortaに挟まれることで腎静脈圧が上がり,左腎の毛細血管が破綻し血尿を生じるナッツクラッカー症候群を合併することが知られている9),10)。典型的には血尿を生じるが,起立性蛋白尿の原因となることも報告されている。今回の入院中には尿潜血や尿蛋白は認めなかったが,造影CT検査では左腎静脈の拡張や左精巣静脈への造影剤逆流の所見を認めた。左腎静脈圧の亢進を反映しているものと考えられ,既往歴の尿蛋白はSMA症候群の合併症であった可能性も示唆された。 治療としては,まずは保存的治療が第一に選択される。治療法としては,①胃管留置による腸管減圧,②嘔吐などによる電解質異常の補正,③栄養療法の3つがあり,体重減少の進行を防ぐことが最も重要とされる。本症例では過去の症例報告に従い,上記の保存的治療に加えて,腸管蠕動促進薬の内服,少量頻回の食事摂取,食後は腹臥位や左側臥位をとるなどの生活指導を行った11)。食後の腹臥位や左側臥位は,小腸の腸間膜の緊張を開放するためAorta-SMA angleを緩め腹痛を緩和するとされている1),12),13)。以上のような保存的治療を行っても症状を繰り返す症例に対しては,外科的治療として十二指腸・空腸吻合術などのバイパス術が

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