南予医学雑誌 第17巻
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中川、他:標準体型の若年男性に発症した上腸間膜動脈症候群南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-49-側弯症に対する矯正固定術後の解剖学的異常2)が原因とされている。本症例は外見上標準体型と考えられたが,画像上は十二指腸周囲脂肪組織を含む内臓脂肪が少ないことが発症の誘因の一つと考えられた。体型を表す指標としてBMIが用いられるが,本症例のBMIは20.0と日本人男性としては標準体型である。BMIとSMA症候群の関連としては,SMA症候群を疑う臨床症状や画像所見を有しない群のBMIはおよそ25.0であったのに対し,SMA症候群を疑う群のBMIはおよそ20.0であったとの報告がある3)。一方で,SMA症候群の発症とBMIの低値は必ずしも関連しないとの報告もある4)。BMIでは体脂肪率が反映されないこともあり,本症例のように,BMIが標準範囲内でもSMA症候群は否定出来ないと考えられる。 診断には,特徴的な画像所見からCT検査(図2)胸腹部造影CT検査(冠状断)十二指腸水平脚および左腎静脈はSMAとAortaに挟まれ狭小化している(矢印)。左腎静脈の軽度拡張を認める。                     が有用である。腹部単純CT検査では,本症例にも認めたような胃・十二指腸の著明な拡張と液体貯留,およびSMAと大動脈に十二指腸水平脚が圧排されてくちばし状を呈する,beak signと呼ばれる所見が認められる。また,造影CT検査を用いたSMA症候群の診断基準では,Aorta-SMA angle < 25°(正常:38~65,本症例:19°)およびAorta-SMA distance < 8㎜(正常:10~28㎜,本症例:6.0㎜)とされており5),本症例では2つの基準とも満たした(図3)。また,その他の画像検査でも特徴的な所見を示すと報告されている。腹部単純X線検査では,立位で胃・十二指腸の拡張がdouble bubble signとして認められ,上部消化管造影検査では,十二指腸近位部の著明な拡張および水平脚での造影剤の直線的断裂像などが特徴的である6),7)。超音波検査でもCT検査と同様に,Aorta-SMA angleおよびAorta-SMA distance

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