南予医学雑誌 第17巻
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平野、他:死因究明に果たすAutopsy imagingの役割南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-37-あり5),この特定が難しい症例には造影剤を使用して胸骨圧迫をしながら撮影する方法や,MRIを併用するなどの方法で死因究明率が上がると考えられている。また,Aiに精通した放射線科医の読影も必須となる。 平成27年10月には医療事故調査制度が施行され,医療事故の防止と発生時の対応の基本的な資料として非侵襲性・再現性・簡便性という特徴をもつAiの存在意義は大きくなっている。医療事故対策としてAiを有効に活用するために医療安全委員会はまず,入院患者の想定外の死亡事例に対しては全例Aiを実施することが望ましいと考えられる。 Aiの死因究明率は30%位と言われているが6),当院では45%であった。当院の究明率が15%高い理由を考えると,Aiを施行しない遺体が多数存在すること,また,病理解剖がほとんど行われないことが一因と考えられる。 Aiを施行しない理由としては,生きている人が対象でないため健康保険を使用することができず実費(10割負担)となることが挙げられる。そのためCPAOAで運ばれてきた遺体が経済的理由でAiを行われない場合が多々あり,ここ3か月の統計ではAiは3割ほどしか行われていない。このAi率をどう上げていくかが,今後の課題となっている。 その他に問題点として,Aiを行うために長時間待たされて,死後硬直などでエンゼルケアに支障がでる場合,汚染がひどい場合,感染症が不明の場合,Ai専用CTが無い場合に検査室まで遺体を搬送する場合の一般患者等への配慮をどうするのか,など課題はたくさんあり,それらを一つ一つ解決しなくてはならない。 Aiは,死因究明だけでなく,小児医療の向上や児童虐待の防止,在宅医療等高齢者医療の向上,犯罪の見逃し防止,今後起こりうる大規模災害等の被災者の身元確認(歯形の3D構築)など様々な社会的課題への対応にも有効な方策として期待されており,今後一層推進されることが期待される。参考文献1)  平成26年(2014) 人口動態統計の年間推計:厚生労働省ホームページ;http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei14/dl/hon-bun.pdf2)  Ai適応ガイドライン:オートプシー・イメージング学会ホームページ;http://plaza.umin.ac.jp/~ai-ai/read-ing/proposal/proposal_91.php3)  日本放射線科専門医会・医会ワーキンググループ 社団法人日本放射線技師会Ai活用検討委員会編:Autopsy imaging ガイドライン 株式会社ベクトルコア2009:50-514)  日本放射線科専門医会・医会ワーキンググループ 社団法人日本放射線技師会Ai活用検討委員会編:Autopsy imaging ガイドライン 株式会社ベクトルコア2009:495)  日本放射線科専門医会・医会ワーキンググループ 社団法人日本放射線技師会Ai活用検討委員会編:Autopsy imaging ガイドライン 株式会社ベクトルコア2009:486)  田島信哉:聖マリアンナ医科大学におけるCPA症例の現状 Ai学会誌第9巻第1号2012:2:18

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