南予医学雑誌 第17巻
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平野、他:死因究明に果たすAutopsy imagingの役割南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-35-症例紹介症例1 自宅で入浴中,浴槽で頭からお湯に浸かった状態で家人に発見され,救急搬送されたCPAOA。 遺体発見時の状況,および胸部のAi-CT(写真A)で気管に液状物が見られることより,入浴中の溺水と考えられた。一方,頭部のAi-CT(写真B)では硬膜下血腫が認められ,意識障害など溺水の原因との関連も考慮される症例であった。症例2 二階の屋根で作業中,立てかけていた梯子の下に倒れているのを発見され,救急搬送されたCPAOA。 Ai-CT(写真C)では作業中の屋根からの転落に起因すると考えられる肋骨骨折,血気胸,骨盤骨折などが認められた。また,上行大動脈から弓部にかけて大動脈解離とそれに伴う出血が見られ,大動脈解離の合併が確認された(写真D)。今回の大動脈解離が急性期か慢性期か,あるいは外傷性かまではこのCTでは断定できない。 この2症例のように,遺体発見時の状況で予想される死因以外に,新たに死因の可能性が発見できることがあり,Aiは死因究明のための重要な検査となっている。考察 Aiを行うことによって,検視のみではわからない死に至る原因や過程が判明することがある。正確な死因究明のため,Aiは適正に撮影されることに加え,正確な読影が必要となる。読影のためには考慮しなくてはならない代表的な変化が2つあり,その1つは死後の変化であり,もう1つが心肺蘇生術後の変化である。 死後変化には,血液就下や脳浮腫・自己融解・腐敗などがあり3),心肺蘇生術後の変化には,肋骨骨折・腸管内ガス・消化管拡張。肝内ガスなどがある4)。これらを考慮して読影をしなければ死因究明率を上げることはできない。 またAiで特定しやすい死因と特定が難しい死因があり,特定が難しい死因には虚血性心疾患や肺動脈血栓症・薬物毒物などが(図2)

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