南予医学雑誌 第17巻
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岩村、他:市立宇和島病院放射線科における副腎静脈サンプリングの現状南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-27- 副腎静脈の選択,採血の際,必要に応じてマイクロカテーテルを用いる。 採血後はカテーテルの逸脱がないことを確認する。⑤ ACTH250μgを静注し15分後より,上記と同様に3か所から5㎖の同時採血を行う。⑥ 採血終了後カテーテルとイントロデューサーを抜去し,圧迫止血を行う。結果 採取した検体は「原発性アルドステロン症の診断治療ガイドライン-2009-」3)に従って副腎静脈へのカテーテル挿入の判定とアルドステロン過剰分泌・左右差の判定が行われる。前者は「ACTH負荷後の副腎静脈血中コルチゾール濃度が200μg/㎗以上」あるいは「ACTH負荷後の副腎静脈血中コルチゾール濃度が下大静脈血中コルチゾール濃度の5倍以上」をもってカテーテル挿入成功と判定される。 ACTH投与後に採血し得た48例のうち,血管選択に成功したのは左副腎静脈で48例(100%),右副腎静脈で40例(83%)であった(図2)。 合併症として下大静脈内膜損傷を1例,右副腎出血を1例認めた。下大静脈内膜損傷の症例は血管選択不成功,右副腎出血の症例は血管選択成功の結果であった。また別の1例では右副腎出血が疑われたため,採血することなく検査を中止した。考察 カテーテル挿入の文献的な成功率は大多数で90%以上と報告されているが4),当院での成績は83%とやや低くなっている。不成功の理由は右副腎静脈を正確に同定できていないことと適切な部位から採血できていないことが大半と考えられる。通常右副腎静脈は下大静脈に直接流入しているが,近傍には副肝静脈も流入しており,血(図2) 年別のAVS件数と結果

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