南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-22-(写真5)症例5の胸水細胞診a:細胞像(Pap.染色),b:セルブロック像(H.E.染色)c:セルブロック像(免疫染色,CK7),d:セルブロック像(免疫染色,カルレチニン)スポイトを用いて作製したセルブロックは,特殊な器具や装置,薬品を必要とせず,簡便な方法であった。しかし体腔液中の細胞数が少ない場合には,集細胞法を行ってもセルブロック作製がうまくできない症例があり,27例中1例経験した。細胞の微量な検体に対しての改良が必要であり,今後の検討課題である。またセルブロックはパラフィン包埋であるため長期的な保存が可能であり,EGFR遺伝子変異解析やALK融合遺伝子,癌治療薬適応評価12) 13)(HER-2など)の検索に幅広く利用することができる。特に,生検や手術を行えず検索ができない症例については有用と考えられる。将来新しい治療方法が開発された場合にも,後日追加検査が可能であり,必要な時に繰り返し検索でき多くの情報を得ることが可能である。結 語 平成28年度診療報酬改定により病理標本作製料の細胞診関連として,新たに「N004 細胞診3セルブロック法によるもの」の項目が追加収載され,860点が算定可能となった14)。これは悪性中皮腫を疑う患者に対して,穿刺吸引等により採取した検体を用いてセルブロック法により標本作製した場合に限り算定する内容であった。今回,新たに算定可能となったセルブロックを積極的に作製することは,より正確な診断が可能となり精度向上にも寄与する。また,近年開発されつつある分子標的治療薬の適応判定や治療方針の決定,予後においても影響を与える重要な診断方法であると考える。 本論文に関連し,開示すべきCOI状態にある企業等はありません。

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