南予医学雑誌 第17巻
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菅、他:体腔液細胞診におけるセルブロック作製の有用性について南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-21-た,追加免疫染色を行い,E-cadherin陽性,Progesterone Receptor(PgR)陽性,HER2 score:1+であり,乳癌の再発と診断した。(写真4)症例5.80歳代,女性,悪性中皮腫臨床所見:倦怠感,呼吸困難があり,大量の胸水を認めたため,胸水細胞診が施行された。細胞診:パパニコロウ染色,ギムザ染色標本より,大小の球状集塊を多数認め,一部孤立性に出現していた。核は類円形,中心性で核小体が目立ち,細胞質は重厚感があり辺縁は不明瞭であった。これらの所見から,反応性中皮細胞や中皮腫の判定困難な症例であった。鑑別のためセルブロックを作製した。セルブロック法:H.E.染色では,大型の核を持つ異型細胞が胞巣状に認められた。免疫染色ではCK7陽性,CK20陰性,CEA陰性でカルレチニンは陽性であった。これらの所見等より悪性胸膜中皮腫と診断された。(写真5)考 察 胸水,腹水,および心嚢液の体腔液から細胞を集めて組織標本作製と同じ方法でパラフィンで包埋したセルブロックを作製した。細胞診の形態学的診断に加え,セルブロックから複数枚の未染色標本を作製し,必要に応じた複数の抗体を用いた免疫染色を実施することにより,出現した細胞の良悪性の鑑別や癌の組織型の判定,原発不明癌の場合は原発巣の推定検索が可能となり,より正確な診断を行うことができる。セルブロック作製方法は,現在種々の方法が考案されているが,今回我々が選択した(写真4)症例4の腹水細胞診a:細胞像(Pap.染色),b:セルブロック像(H.E.染色)c:セルブロック像(免疫染色,CK7),d:セルブロック像(免疫染色,ER)

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