南予医学雑誌 第17巻
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菅、他:体腔液細胞診におけるセルブロック作製の有用性について南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-19-(写真1)症例1の胸水細胞診a:細胞像(Pap.染色),b:セルブロック像(H.E.染色)c:セルブロック像(免疫染色,CK7),d:セルブロック像(免疫染色,TTF-1)れた。免疫染色では,CK7陽性,CK20陰性,TTF-1は陽性でカルレチニンは陰性であった。これらの結果より,肺原発の腺癌と推定された。(写真2)症例3.80歳代,男性,胃癌の腹膜播種臨床症状:嚥下障害で入院中,胃癌と診断された。右胸水貯留があり肺癌の可能性もあるため胸水細胞診を施行した。細胞診:パパニコロウ染色標本では,不規則な重積性のある細胞集塊を多数認め,核小体が目立ち,ギムザ染色では核偏在の大型細胞が観察された。これらの所見から腺癌細胞と診断されたが,原発巣推定のためセルブロックを作製した。セルブロック法:偏在性の核をもつ細胞が胞巣状,孤在性に見られSignet ring cell typeの異型細胞も認められた。免疫染色では,CK7陽性,CK20陰性,TTF-1陰性でCDX-2は核に陽性所見を認めた。これらの結果より,胃癌の腹腔内転移と推定された。(写真3)症例4.60歳代,女性,乳癌の再発臨床症状:腹部膨満感があり臍部腫瘤を認めた。原発不明の癌性腹膜炎と診断され,腹水細胞診が施行された。約30年前に乳癌の既往があるため乳癌の再発が疑われた。細胞診:パパニコロウ染色,ギムザ染色標本では,大小不規則で重積性のある細胞集塊が認められた。原発巣は不明であり,臨床からのセルブロック作製の要望もあり検索を行った。セルブロック法:H.E.染色では,乳頭状,小管腔構造を示した増殖を認めた。免疫染色では,CK7陽性,CK20陰性,Estro-gen Receptor(ER)は核に陽性所見を認め,GCDFP15は一部に陽性所見を認めた。CDX-2,D2-40は陰性であった。これらの結果より乳癌の再発が考えられた。ま

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