南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-18-細胞診:パパニコロウ染色標本では,少数のリンパ球,組織球を背景に不規則な重積のある細胞集塊が多数出現しており,核は偏在性を示し,切れ込みなどの核形不整がみられ,核小体は類円形ないし不整形で目立ち,細胞質には泡沫状で小型空胞が認められた。細胞診では,腺癌と思われる異型細胞を多数認めたが,悪性中皮腫と鑑別を必要とするためセルブロックを作製した。セルブロック法:ヘマトキシリン・エオジン(H.E.)染色標本では,好酸性胞体をもつ異型細胞が,乳頭状に増殖し,一部に管腔形成や細胞質内小腺腔(ICL)が認められた。 免疫染色では,Cytokeratin(CK)7陽性,CK20陰性,カルレチニン陰性でTTF-1は核に陽性所見を認めた。これらの結果から肺乳頭状腺癌と診断された。化学療法選択のためのEGFR遺伝子変異解析にも今回作製したセルブロックを使用し検査を行った。(写真1)症例2.80歳代,男性,原発性肺腺癌臨床症状:腹部膨満感や倦怠感があり,腹部超音波検査で転移性肝腫瘍が疑われた。大量の胸水と呼吸困難が出現し,胸水細胞診が施行された。臨床的には肺癌,胆管癌,肝癌などが鑑別に上がっていた。細胞診:パパニコロウ染色標本では,大小の不規則な重積性のある細胞集塊を多数認めた。核は偏在し,核小体が目立ち,大小不同,核形不整が認められ,細胞質は泡沫状であった。 これらの所見から腺癌細胞と診断されたが,原発巣推定のためセルブロックを作製した。セルブロック法:H.E.染色では,偏在性の核を持つ細胞が孤立性に見られ,一部に空胞形成をもつ細胞や粘液産生細胞が認めら(図1)スポイトを用いたセルブロック作製方法

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