南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-96-  目でみる症例 嚥下障害を主訴とした下咽頭脂肪腫の一例 寺 岡 正 人,相 原 隆 一,青 石 邦 秀,勢 井 洋 史 市立宇和島病院 耳鼻いんこう科(南予医誌 2015;16:96-100.)症 例;70歳台,男性主 訴;嚥下障害,嘔吐現病歴; 4年程前より食事の際にのどの奥につまる感じを自覚していた。徐々にのどのつまり感が増悪し,摂食後の嘔吐を繰り返すようになったため,平成27年2月中旬に前医内科を受診した。同院にて上部消化管内視鏡検査を施行され,下咽頭に腫瘤病変を認めたため,精査加療目的に当科を紹介受診した。初診時現症; 耳鼻咽頭に特記すべき異常なし。 喉頭ファイバースコピー検査では披裂部やや左側より声門部に陥頓するように表面平滑な隆起病変を認めた(図1)。声門と腫瘤の間にはわずかな間隙があるが,声帯受稿日 平成27年6月30日受理日 平成27年8月7日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 耳鼻いんこう科 寺岡 正人の観察は困難であった。やや含み声であったが喘鳴や呼吸時の閉塞音はなく,SpO2の低下も認めなかった。 視診上,喉頭の嚢胞性疾患が疑われたため,同日頸部MRI検査を施行した。声門上,下咽頭および頸部食道左壁から前壁に30×20×70㎜m大のT1強調像,T2強調像ともに境界はほぼ明瞭,内部均一な高信号の病変を認めた。また,脂肪抑制T2強調像でも高信号を呈していた(図2)。経 過; 呼吸苦の訴えはなかったが,声門上に腫瘤を認め窒息の危険性も危惧されたため,初診後4日目に手術を予定した。治療に先だって内視鏡下に腫瘤の穿刺を試みたが,内容液の漏出は認めなかった。術前に頸部単純CT検査を追加したところ,MRIの部位に一致して境界は比較的明瞭で内部はわずかな軟部濃度を有するものの大部分は脂肪濃度と同程度の均一な低吸収を呈していた(図3)。以上の所見から,脂肪腫が強く疑われた。

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