南予医学雑誌 第16巻
96/118

南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-94-間隔で測定し,その最大値で評価するところを,9時間蓄尿を用いて検討したため,排泄量を過少評価してしまったと考えられた。実際には,Na,Cl共にその最大排泄量はより高値であったことが予測され,ここから予測される反応はGSとNozuらによって報告された3型BSの反応パターン,言い換えればSeyberthらが提唱するSLTのDCT disordersに一致すると考えられた。 3型BSはClチャネルであるClC-Kbの異常により発症する。 ClC-KbはDCTのみならずTALにも存在するが,同様のClチャネルであるClC-KaがTALに存在するため,TALのClC-Kbの機能は代償される。このため3型BSではDCT 上の障害のみが認められることになり,同様にDCT上に障害部位を持つGSとの鑑別が臨床上困難となる3)。 前述のようにサイアザイド負荷試験に無反応例では3型BSとGSが疑われるが,両者の鑑別は困難である。その鑑別には遺伝子検査を必要とし,正に本症例は遺伝子検査でのみ診断し得たケースであったと考える。結語 難治性の低K血症が持続する場合,GSを含むSLTを疑い,精査を行うことが重要である。利尿剤負荷試験ではGSと3型BSとの鑑別は不十分であり,その診断には遺伝子検査が必要である。謝辞 遺伝子検査にご協力いただきました神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野の貝藤裕史先生,野津寛大先生,飯島一誠先生に深謝します。参考分献1)  野津寛大,貝藤裕史,飯島一誠,他:遺伝性塩類喪失性尿細管機能異常症(Salt-losing tubulopathy)の分子病態.Annual Review 腎臓2012,中外医学社,東京,2012: pp178-186.2)  神田杏子,野津寛大,橋村裕也,他: Bartter症候群とGitelman症候群に対する利尿剤負荷試験の有用性についての検討。日本小児腎臓病学会誌 2008; 22: 24-28.3)  Nozu K, Iijima K, Kanda K, et al.: The pharmacological characteristics of molecular-based inherited salt-losing tubulopathies. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95:E511-E518.4)  Lin SH, Cheng NL, Hsu YJ, et al.: In-trafamilial phenotype variability in pa-tients with Gitelman syndrome having the same mutations in their thiazide-sensitive sodium/chloride cotrans-porter. Am J Kidney Dis. 2004;43:304-312.5)  Lin SH, Shiang JC, Huang CC, et al.: Phenotype and genotype analysis in Chinese patients with Gitelman’s syndrome. J Clin Endocrinol Metab. 2005;90:2500-2507. 6)  Colussi G, Bettinelli A, Tedeschi S, et al.: A thiazide test for the diagnosis of renal tubular hypokalemic disorders. Clin J Am Soc Nephrol. 2007;2:454-460.7)  Tago N, Kokubo Y, Inamoto N, et al.: A high prevalence of Gitelman’s syn-drome mutations in Japanese. Hyper-

元のページ  ../index.html#96

このブックを見る