南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-92-ように,本症例ではフロセミド負荷試験の反応が不十分であったことと,3型BSでもサイアザイドに無反応である症例があることを理由に確定診断には至らなかった。そのため,神戸大学に依頼し,直接シークエンス法によりNCCT,CLCNKBの遺伝子解析を行った。結果,NCCTの蛋白コード領域にR642C,V677Mの変異を認め,患児はこれらの変異を複合ヘテロ接合性に有していることが判明し,GSと確定診断した。(図1) 以後は外来で定期的に血液検査を施行し,K製剤,Mg製剤の内服量を調節している。血清K値は正常下限程度で推移,血清Mg値は正常範囲内で推移し,まずまずのコントロールを得ている。考察 GSの罹患割合は,最近の研究では従来考えられていたより多く,日本人1万人につき10.3人の患者がいると推計されている7)。そのため,罹患割合の点から考慮しても,難治性の低K血症が持続する場合には,GSを含めた遺伝性塩類喪失性尿細管機能異常症(salt-losing tubulopathy: SLT)(表4)を疑表3ハイドロクロロサイアザイド負荷試験‣夕食後晩絶飲食とする表負荷試験‣夕食後一晩絶飲食とする。‣4時間横臥の後、10ml/kgの飲水を行わせる。分ごと回排尿そ検査値を基準値とす‣30分ごとに2回排尿し、その検査の値を基準値とする。‣その際に血液検査も行い、1mg/kgのhydrochlorothiazide(最大50)を内服させその後30分ごとに6回排尿し(最大50㎎)を内服させ、その後、30分ごとに6回排尿し、それぞれ尿検査を行う。‣最後にまた血液検査を行い基礎値のFEClに比べ飲水‣最後にまた血液検査を行い,基礎値のFEClに比べ、飲水後6回の排尿のうち、最もCl排泄量の多い検体のFEClとの差(⊿FECl)を比較しする。‣多くのGSでは⊿FEClは2.3%未満となると言われている。表3ハイドロクロロサイアザイド負荷試験‣夕食後晩絶飲食とする表負荷試験‣夕食後一晩絶飲食とする。‣4時間横臥の後、10ml/kgの飲水を行わせる。分ごと回排尿そ検査値を基準値とす‣30分ごとに2回排尿し、その検査の値を基準値とする。‣その際に血液検査も行い、1mg/kgのhydrochlorothiazide(最大50)を内服させその後30分ごとに6回排尿し(最大50㎎)を内服させ、その後、30分ごとに6回排尿し、それぞれ尿検査を行う。‣最後にまた血液検査を行い基礎値のFEClに比べ飲水‣最後にまた血液検査を行い,基礎値のFEClに比べ、飲水後6回の排尿のうち、最もCl排泄量の多い検体のFEClとの差(⊿FECl)を比較しする。‣多くのGSでは⊿FEClは2.3%未満となると言われている。(表3) ハイドロクロロサイアザイド負荷試験い,検査をすすめていくことが重要であり,そのためには利尿剤負荷試験が有用であると考える2)6)。SLTは2008年Seyberthらによって提唱された疾患概念である。そこではBSとGSを,各々の責任蛋白の存在部位に基づく分類ではなく,臨床的障害部位に基づいて細分類している。すなわちmacula densaより近位部のthick ascend-ing limb of Henle’s loop(TAL),macula densaより遠位部のdistal convoluted tubule (DCT),そしてその両者を障害部位とする3つのグループに分類し,それぞれ①Loop disorders,②DCT disorders,③Combined disordersとしている8)9) (表4)。そして,それら各グループの障害は,臨床的に,ループ系利尿剤,サイアザイド系利尿剤,その両者を投与した時に認められる反応にそれぞれ類似する。利尿剤負荷試験では同様の反応を呈する3型BSとGSは,SLTではDCT disordersに分類されており,その臨床的理解を容易にしている8)9)。今回我々が行ったフロセミド負荷試験では,典型的なGSと比べると,その反応は不良であった。その理由はフロセミド投与後,本来Na,Clの排泄量の増加は30分から60分

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