南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-90-序言 バーター症候群(Bartter syndrome: BS),ギテルマン症候群(Gitelman syndrome: GS)は低K血症,代謝性アルカローシス,高レニン,アルドステロン血症を呈するにもかかわらず,正常血圧であることを特徴とする先天性尿細管機能障害に伴う症候群である。これまでGSは低Mg血症,低Ca尿症を伴い,臨床症状も軽いことでBSと鑑別できるとされてきた。さらにBSとGSにおいて,その原因遺伝子の解明が進むと共に,それらは1型~4b型BSおよびGSと細分類され1)(表1),実臨床ではこれらの分類は,臨床経過,利尿剤負荷試験に対する反応等からなされてきた。1型,2型BSはループ利尿剤には無反応であり,サイアザイドには反応する。逆にGSはループ利尿剤には反応し,サイアザイドには無反応であると考えられてきた2)。しかし近年,3型BSは従来の予想に反して,ループ利尿剤には反応し,サイアザイドには無反応であることが報告された3)。また,GSの原因遺伝子であるSLC12A3の異常を認めるにも関わらず,GSの臨床上の特徴である低Mg血症と低Ca尿症を伴わない症例の報告もあることから4)5),臨床上3型BSとGSの鑑別は非常に困難であることが分かった。 今回我々は,利尿剤負荷試験では3型BSと区別できず,遺伝子解析でGSと確定診断し得た症例を経験したので報告する。症例【症 例】6歳男児【主 訴】発熱,頚部リンパ節腫脹【現病歴】2012年11月に発熱,頚部リンパ節腫脹が持続するため当科へ紹介され入院した。入院時検査で著明な低Na,K血症を認められ,精査加療が行われた。【周産期歴】特記所見なし。【既往歴】難聴認めない。発達正常。表1Bartter症候群,Gitelman症候群の病態1型Bartter2型Bartter3型Bartter4a型Bartter4b型BartterGitelman病因遺伝子SLC12A1KCNJ1CLCNKBBSNDCLCNKA and CLCNKBSLC12A3蛋白NKCC2ROMKClCKbBiClC-KaandNCCT蛋白NKCC2ROMKClC-KbBarttinClCKa and ClC-KbNCCT役割Na-K-2ClKチャネルClチャネルClチャネルClチャネルNaCl共輸送体役割共輸送体KチャネルClチャネルβサブユニットClチャネルNa-Cl共輸送体低Mg血症なしなし時にあり時にあり時にありあり尿中Ca高高低~正常~高低~正常~高低発見時の年齢胎児期胎児期新生児期新生児乳児期胎児期胎児期学童期以降合併症高K血症難聴典型例では最も重篤ありAnnual Review 腎臓2012:178-186より改変(表1) Bartter症候群,Gitelman症候群の病態

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