南予医学雑誌 第16巻
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岡本、他:宇和島圏の小児医療南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-7-2)日本における小児科医の地域偏在の現状 平成24年の医師・歯科医師・薬剤師調査の概況によると,都道府県別にみた人口10万対医師数は全国平均で226.5人(男182.1人,女44.5人)である。愛媛県の医師数は全国平均を上回っているが,女性医師が少ない傾向がある。 また,主たる診療科が「小児科」に従事する15歳未満人口10万対医師数を都道府県別にみると,「小児科」は東京都が150.1人と最も多く,茨城県が71.9人と最も少ない。また,愛媛県は全国平均の98.7人を少し上回っている。3) 愛媛県における小児科医の地域偏在の現状 愛媛県では,小児医療の集約化が進んでおり,各地域に基幹病院が存在する。平成22年の国勢調査における,各圏域の推計人口は宇摩87,276名,新居浜・西条227,171名,今治165,690名,松山646,814名,八幡浜・大洲144,868名,宇和島114,726名となっている。宇和島圏の人口は愛媛県全体の8.3%を占めている。愛媛県で病院に勤務している小児科医と新生児内科医の概数は,約101名である。人口10万対勤務小児科医師数でみると,松山圏が約10.0と最も高く,次に宇和島圏が約7.8である。他の圏域は2.1から5.4と幅がみられている。市立宇和島病院は基幹病院として,高知県西部の二次保険医療圏である高幡医療圏(須崎市,中土佐町,檮原町,津野町,四万十町)と幡多医療圏(宿毛市,土佐清水市,四万十市,大月町,三原村,黒潮町)をカバーしており,救急搬送や一次二次患者の受け入れを行っている。高幡医療圏と幡多医療圏の人口は155,808名である。単純にこの人口を含めると,人口10万対小児科医師数は3.3となる。宇和島圏において,人口に対する勤務小児科医の数は愛媛県内でみると高い水準である。しかし,高知県西部までカバーしていることを考慮すると,松山圏を除く他の圏内と同程度であることが示唆された。4) 宇和島圏における小児科医数 宇和島圏には宇和島市,松野町,鬼北町,愛南町が含まれる。平成22年の国勢調査での宇和島圏における15歳未満の小児人口は14,576名であり,宇和島市10,125名,松野町471名,鬼北町1,290名,愛南町2,690名であった。小児科を主として標榜する医療機関の数は宇和島市(病院2,クリニック6),松野町なし,鬼北町(病院1),愛南町(病院1,クリニック1)であり,小児科医の総数は勤務医9名,開業医7名である。合計16名を15歳未満人口10万対医師数で計算すると,109.7となり,平成22年の15歳未満人口10万対「小児科」(主たる)従事の全国平均94.4人を上回っている。 一方,市町村別面積をみてみると,愛媛県全体が5,676.10㎢に対し,宇和島圏の面積は1047.46㎢(18.5%)である。人口比率が8.3%であるのに対し,面積比率は18.5%と倍以上である。また,高知県西部の高幡医療圏と幡多医療圏の面積は2967.03㎢であり,宇和島圏と合算すると,4014.46㎢となり,広大な土地面積をカバーしている。そのため,より多くの医療拠点や医師数が必要とされることが示唆される。また,宇和島圏や高知県西部は高速道路を含む交通網の発達が遅れており,移

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