南予医学雑誌 第16巻
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竹口、他:鋭的腎損傷のTAE南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-85-に塞栓領域の皮膚障害が懸念されることや圧迫による止血が見込めることから腰動脈について無処置とした。術中にバイタルサインの変動はなかった。経過 当院に搬入後,緊急血管造影施行及びICU入室までに生理食塩水6,000㎖以上,RCC8単位,FFP 4単位が投与された。その他の切創は縫合や圧迫で対応された。TAE後,貧血の進行はなかった。以降も膿瘍形成や血尿,発熱,腎機能異常等の合併症なく,受傷20日目に軽快退院した。外来で撮影された受傷40日目の最終造影CTを示す(図4)。塞栓した領域の腎は梗塞となり萎縮していた 。腎周囲腔や後腹膜腔の血腫はほぼ吸収されていた。仮性動脈瘤や動静脈瘻,溢尿はなかった。考察 腎外傷の殆どは交通事故や打撲,転落などの鈍的損傷であり,刺創や銃創,医原性といった鋭的損傷は本邦では稀である1),2)。 腎外傷の治療適応を決める際,日本外傷学会の腎損傷分類2008が参考にされる1),3),4)。これによると腎損傷をⅠ型;被膜下損傷(a被膜下血腫, b実質内血腫),Ⅱ型;表在性損傷,Ⅲ型;深在性損傷(a単純深在性損傷, b複雑深在性損傷)に分類し(表),腎茎部血管損傷が見られる場合にはappendixとして「PV」(pedicle vessel)を付記する。このうちⅠ型及びⅡ型の腎損傷は保存的治療可能なことが多く,Ⅲ型ではTAE又は手術が考慮される4)。腎茎部に損傷が及んでいる場合,通常は手術が行われるが,ステント挿入やTAEで治療した報告もある4,5)。(図3)塞栓術後右腎下極の分枝3本をマイクロコイルで塞栓した。血管外漏出は消失した。(図4)受傷40日目の造影CTマイクロコイルが留置され、塞栓領域は梗塞となっている。出血は吸収されている。

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