南予医学雑誌 第16巻
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藤井、他:進行糖尿病腎症の栄養食事指導例南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-79-果的であるという間違った知識を持ち,自己流を貫いていた。 治療を開始して1~2週間後より症状の改善がみられ,体調が良くなったことで新たに食事療法の重要性を身を持って体験し,食事療法への取り組みについて積極性がみられるようになった。 遠方の患者であったため,個人栄養食事指導は2回と少なかったが,糖尿病教室への参加の空き時間なども積極的に活用して食生活の改善点を具体的にアドバイスした。指導内容は,エネルギー確保のため,炒め物や揚げ物など油脂を使用した料理を増やすこと,主食を減量するのではなく,主菜の肉や魚を減量すること,レモンや生姜などの香味野菜の使用で食塩量を抑えても美味しい料理ができること,調味料・加工品に含まれる食塩量を示し,食塩の配分や摂取の目安量の確認などであった。 また,看護師や臨床検査技師と協働して腎機能の検査値の見方や人工透析の概要を説明した。 HbA1c,Cr,およびeGFRの推移を(図3)に示した。eGFRは当初23.0㎖/分/1.73㎡であり,その後,緩やかな低下傾向を示しているもの現在も透析導を免れている。 HbA1cは7.4%で,その後外来加療でも横ばい状態で推移している。考察 糖尿病腎症4期の症例に対し栄養食事指導を行った。患者はそれまで栄養食事指導を受けたことがなく,自己流の食事療法,運動療法を行っていた。指導時には,患者心理の変化ステージに則り,「行動期」にいたるまでの「前熟考期」,「熟考期」,「準備期」で有効とされる介入方法を採用した(表3)。治療により症状が改善されたことで食事療法の重要性に気づき,行動変容につながった。また,病識の獲得により「透(図3)検査値の推移(図3) 検査値の推移HbA1c,Cr,eGFRの検査値の推移をグラフに示す05101520251月3月5月7月9月11月1月3月5月HbA1c(%)Cr(mg/dl)eGFR(ml/分/1.73㎡)

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