南予医学雑誌 第16巻
77/118

藤井、他:進行糖尿病腎症の栄養食事指導例南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-75-はじめに 糖尿病の3大合併症は神経障害,網膜症,腎症であるが,そのうち食事療法に最も関連が深いのは糖尿病腎症1)である。糖尿病腎症の病期は5段階に分類され(表1),病期の進行にしたがって食事療法も制限が増して行く。(表2)しかし,その知識を持つ患者は少なく,腎症が発症してから知る場合が多い。また,平成24年度診療報酬改訂でも糖尿病透析予防管理料2)が新設され,チーム医療による重症化予防が重視されている。 一般的に糖尿病腎症患者の食事療法の受け入れは決して容易ではない。その理由はそれまでの糖尿病食事療法が否定されたかのような患者心理から来るものであろう。腎症発病前の食事療法からは一変して野菜の減量や油脂の使用を勧められ,治療用特殊食品(注1)であるたんぱく質調整食品の購入が必要な場合も多く,経済的負担の増大に戸惑う患者もいる。そのため,早期の介入で糖尿病腎症に対する病期の知識を与えることが肝要である。さらに,病期が進行してからの介入となった場合は患者の受ける精神的な衝撃が大きく,行動変容に結びつきにくい。 本症例は糖尿病腎症4期で初めて栄養食事指導を行うことになった患者である。患者心理を考慮し,変化ステージ別3)の介入を行うことで,一定の効果を得たので報告する。(注1)治療用特殊食品 疾患の治療のために成分を調整した食品。たんぱく質を減量した主食(米飯,パン,麺)や,ショ糖を使用していない中鎖脂肪酸配合の菓子などがある。たんぱく質の制限,エネルギーの確保,血糖値の急上昇の抑制などの目的で使用する。(表1)出典日本糖尿病学会糖尿病性腎症合同委員会「糖尿病性腎症病期分類2014の策定(糖尿病性腎症病期分類改訂)について(表1)糖尿病性腎症病期分類

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る