南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-68-はじめに 胸部外傷後には, 頻度は少ないものの遅発性血胸が発生することがあり, 慎重に経過観察することが必要である。 また, 膿胸は胸部外傷後に続発することがあり, 慢性化すると治療に難渋することが多い疾患である1)。 今回我々は胸部外傷後1ヶ月を経て遅発性血胸と続発性急性膿胸を認めた症例に対し鏡視下手術を行い, 早期回復に至った1例を経験したので報告する。症 例:82歳, 男性主 訴:呼吸困難 既往歴:糖尿病内服薬:なし現病歴:川縁で滑落し右胸部を強打し近医を受診。 胸部CTにて偏位を伴う右第7-11肋骨骨折を認め, 同日当院に紹介, 経過観察目的に当科に入院した。入院後症状増悪なく6日目に退院したが, 受傷後30日目農作業中に呼吸困難が出現し同日当科を再診した。現 症: 体温37.8℃, 血圧137/93 ㎜Hg, 脈拍80/分, SpO2 92%(room air)。 聴診上右肺野全体の呼吸音が減弱していた。 入院時検査所見: RBC 4.00×106/㎣, Hb 13.0g/㎗と貧血を認めなかった。 CRP値は10.42㎎/㎗と高値を認めたが, その他血液, 生化学所見に異常は認められなかった。 胸部X線写真(立位):右胸腔に著明な胸水貯留と右肺虚脱を認めた(図1)。胸部CT:大量の右胸水と胸水による受動性無気肺を認めた(図2)。入院後経過: 入院後, 精査加療目的に右第6肋間より(図1)胸部レントゲン写真右肺野の透過性低下を認めた

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