南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-50-とがわかった。また,透析室看護師も震災時の対応について不安があり,透析中に震災に遭遇した際には,患者だけでなくスタッフもパニック状態になることが予測された。山口1)は,年に数回の避難訓練は,大切な災害教育の場であるとの認識を持って企画し実施すべきであると述べている。X病院透析室における災害対策は急務であり,なかでも震災時の避難訓練が重要だと考えられた。そこで今回,避難訓練による,透析室看護師の震災時対応に関する認識の変化を明らかにし,震災発生時に透析患者を確実に避難させる方法を検討するための基礎資料としたので報告する。対象と方法1)避難訓練 ⑴実施日時:平成26年12月16日16時  ⑵場  所:X病院透析室 ⑶対 象 者:透析室スタッフ8名  ( 医師1名,看護師6名,臨床工学技士1名) ⑷手  順:地震発生直後から透析を離脱し,避難するためのシナリオを作成した(表1)。状況設定は,平日午後3時に緊急地震速報が流れ,震度6弱,津波第1波が40分後に到達する予想が出たというものである。8名の配役は,スタッフ間で話し合い,総リーダー,Aリーダー,Bリーダー,患者C(独歩),D(車椅子),看護師E,F,Gとした。    総リーダーの行動は,対策本部からの指示を受け緊急離脱の判断を行うこと及びAリーダーから透析室内の被災状況の報告を受けること。Aリーダーの行動は,透析室内の被災状況を把握し総リーダーに報告すること及び総リーダーから指示を受け,避難誘導を発令すること。Bリーダーの行動は,Aリーダーから避難誘導を受け,避難袋を背負い患者の先頭に立ち誘導することである。    なお,離脱とは逆流防止弁付穿刺針と血液回路の接続部をはずすことである。2)アンケート ⑴  独自に作成したアンケート用紙(患者の避難,リーダー・スタッフとしての行動,避難訓練に対する認識に関する10項目4段階評価,一部自由記述)(表2)を,避難訓練前に透析室看護師に手渡し訓練の前日までに回収した。アンケートは,無記名とし,設置した箱に投函してもらった。 ⑵  避難訓練直後,同じアンケートを透析室看護師に手渡し,1週間後に回収した。訓練前と同様,アンケートは無記名で設置した箱に投函してもらった。 ⑶  アンケートの項目毎に単純集計し,避難訓練の実施前後で比較した。   自由記述については内容をまとめた。倫理的配慮  対象者に対して,文書と口頭で研究目的,内容,方法及び結果の公表について説明し,アンケートの投函をもって同意とした。本研究で得られた情報に関しては,個人が特定されないよう管理し,本研究以外には使用しないことを伝えた。なおこの研究の実施及び公表についてはX病院看護部の許可を得ている。

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