南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-46-2.1log copies/mL以上の5件はエンテカビル(核酸アナログ)予防投与となった。考察 わが国におけるB型肝炎ウイルス持続感染者数は約130~150万人と推定されている。その内肝機能正常なHBVキャリアに対し,悪性リンパ腫に対しての分子標的薬であるリツキシマブや,自己免疫性疾患での副腎皮質ステロイドの単独治療または併用治療により重症肝炎を発症する症例が報告されている3)。当院の検討においてはHBs抗原陽性が10件(4%)で,ガイドラインに従いHBV DNA定量検査を行いエンテカビル(核酸アナログ)予防投与となっている。HBV再活性化はHBs抗原陽性の非活動性キャリアでHBV DNA量が増加する場合と,HBs抗原陰性の既往感染者においてHBV DNAが血中から検出されるようになる場合に分類される。後者に起因する肝障害を「de novo B型肝炎」と言い,問題視されている1)。今回の調査で,HBs抗原陰性・HBc抗体陽性,HBV-DNA定量検査2.3log copies/mLの症例を1例経験した。その患者の検査時系列を調査すると,2013年7月HBs抗原陽性,同年12月HBs 抗原が陰性化し同日測定のHBs抗体,HBc抗体,HBe抗体では陽性であった。HBV感染病態期の免疫監視期でHBs 抗原が陰性化し,肝細胞内にHBVのDNAがわずかに残存しているが免疫反応によってウイルス増殖が制御され肝炎が発症していない状態であると考える。やはりHBs抗原検査だけでは不十分であり,HBs抗体・HBc抗体の同時測定を行うセット検査が重要であることが言える。 国内での50歳以上の年齢層ではB型肝炎既往感染が人口の20~25%を占めると推定され,HBV再活性化による重症肝炎の予防は重要である1)。当院での検討においてもHBs抗原陰性・HBc抗体陽性(and/or HBs抗体陽性)は29%を占める結果となった。HBs抗原のみの測定では再活性化のリスクのあるオカルトHBV感染者を見逃すことが示唆された。免疫抑制剤使用時や化学療法前にはガイドラインに従いHBs抗原,HBc抗体HBs抗体を測定することが重要であると考えられる。 HBs抗体はHBs抗原に対する抗体でHBVの感染防御の働きがある。2014年6月に改定されたB型肝炎治療ガイドライン(第2版)には,HBs抗体単独陽性(HBs抗原陰性,HBc抗体陰性)でのHBV再活性化が報告されており,ワクチン接種歴が明らかである場合を除きガイドラインに従った対応が望ましいとされている4)。 当院ではスクリーニング検査の依頼件数・陽性率・HBV-DNA定量検査の結果は,未提出率の低下とガイドライン尊守を目的に,院内化学療法委員会で定期的に報告している。HBV-DNA定量検査の未提出率は,2013年6月からの主治医への陽性報告開始前後で比較すると,陽性報告開始前は20%(10/49件),陽性報告開始後は9%(5/54件)と減少傾向にあった。未提出件数をさらに減少させることが今後の課題である。結語 2013年「B型肝炎治療ガイドライン」において「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」(図6)が改定された(日本肝臓学会)。血清HBV DNA量を測定するモニタリング間隔を1

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