南予医学雑誌 第16巻
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花山、他:上部消化管異物の臨床的検討南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-41-除去の際には先端を把持してファイバーに平行にして摘出することが必要であると報告している。なお,6~10㎝以上の長い異物は十二指腸屈曲部を越えられず,内視鏡的摘出困難時は早期に外科手術が必要とされている2),11)。 今回の検討では異物自体による合併症を認めた症例はすべて鋭的異物例であった。Laiら12)は異物誤嚥が疑われた症例の多変量解析で合併症の危険因子として①2日間を越える症状,②頚部X線陽性所見,③輪状咽頭部または上部食道での異物嵌頓を挙げている。また誤嚥から24時間以上経過した場合,合併症の発生率が高いことも示されている。今回の検討でも24時間以上経過している症例では膿胸を併発しており,誤飲後24時間以上経過した症例では合併症を念頭に置いた管理が重要であり,抗生物質投与やドレナージが必要と考えられた。結論 大部分の上部消化管異物に対しては,異物の性状に合わせて,先端フードやオーバーチューブを使用することで安全に除去することが可能であった。消化管壁に刺さっている鋭利な異物に関しては,縦隔炎・腹膜炎併発の可能性も念頭におき,外科手術を選択肢に入れておく必要がある。参考文献1)  Sugawa C.Ono H.TalebM.Endoscopic management of foreign bodies in the upper gastrointestinal tract. World Jurnal of Gastrointestinal Endoscopy 2014;6:475-481.2)  Eisen GM.Guideline for the manage-ment of ingested foreign bodies. Gas-trointest Endosc 2002;55:802-806.3)  Webb WA.Management of foreign bodies of the upper gastrointestinal tract:update. Gastrointest Endsc 1995;41:39-51.4)  赤松泰次,白井孝之,豊永高史.異物摘出ガイドライン.消化器内視鏡ガイドライン第3版.日本消化器内視鏡学会監修,医学書院,東京,2006;206-2014.5)  米地真,藤田直孝,石田一彦ほか:上部消化管異物に対する緊急内視鏡.消化器内視鏡2006;18:1548-1553.6)  古川浩一,成澤林太郎,新井太ほか:上部消化管異物の内視鏡的摘出例の検討.Endscopic Forum for digestive disease 1994;10:187-192.7)  上原正義,多田修治,江口洋之ほか:内視鏡的に摘出した上部消化管異物104例の臨床的検討.Gastroenterol Endosc 2010;52:1243-1249.8)  磯崎豊,山西正芳,山口俊介ほか:内視鏡的異物除去術を施行した消化管異物症例の臨床的検討.松仁会医学誌 2010;49:104-109.9)  鈴木茂.食道異物の種類別摘出法.消化器内視鏡 2000;12:704-705.10)  多田正大.小児の消化管内視鏡検査法. Gastroenterol Endosc 1985;27:2675-2679.11)  Veltchkov NG,Grigorov GI,Losanoff JE et al. Ingested foreign bodies of the gastrointestinal tract: retrospective analysis of 542 cases. World J Surg 1996;20:1001-1005.

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