南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-40-ABDDC(図3) 上部消化管内視鏡所見および摘出異物(症例2)A,B:‌下部食道に埋没しているカッター破片,C:オーバーチューブを使用し把持鉗子で抜去を試みている像,D:外科的に摘出された異物は,3×2㎝大のカッター破片であった。れている。当院における異物摘出症例は消化管壁の損傷をきたす可能性がある場合や腸閉塞を来す可能性がある場合であった。 患者背景として,性別割合では,若年・壮年群に比べ高齢群で女性の占める割合が多かった。これまでの報告でも,高齢者において女性の占める割合が高いとされており,原因として,NSAIDsの使用頻度が高いことが挙げられている5)。 消化管異物の種類では義歯やPTP,魚骨の割合が多かった。米国ではWebbらは食物塊,特に食道内での肉塊の嵌頓が最も多いと報告している3)。日本では古川らの報告6)では食物塊やPTPが多く,上原らの報告7)ではPTPや魚骨,義歯が多く,義歯例が多いことが注目されている。今回の検討では魚骨の割合が多いが,当院は漁港に隣接する地域に位置しており,特に高齢者では魚介類を摂取する機会が多いことも影響していると考えられた。また,PTPは辺縁が鋭利であり,これまでもミシン目を廃止し誤飲を予防する対策はとられてきているが,患者本人や家族がはさみで1回ずつ切り分けて管理している症例も多く,服薬指導の徹底など十分に注意する必要があると考えられる。 異物の停留部位に関しては磯崎ら8)はPTPや食物塊は食道内に多く認めると報告しており,上原ら7)はPTPや魚骨は上部食道に多く認めると報告しており,今回の検討でも同様の結果を得た。 多くの症例では適切な鉗子を使用することで安全に摘出することが可能である。PTPなど辺縁の形状が滑らかでない鋭的異物摘出の際には,粘膜損傷防止のため先端フードやオーバーチューブが頻用されている9)。今回の検討では針やピンの異物症例は認めなかったが,多田10)は針やピンの

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