南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-38-表3.異物摘出法および成功率 例(%)内視鏡的摘出 成功          53 (98.1) 不成功(外科的摘出)   1 (1.9) 方法 ネット         21 (38.9) 把持鉗子        18 (33.3)  内視鏡で押し込む    12 (22.2)  吸引           5 (9.3)  オーバーチューブ使用  26 (48.1) フード使用        7 (13.0)           (併用2) 合併症  食道損傷         3 (5.6) あった。 停留部位は,食道28例(51.9%),胃24例(44.4%),十二指腸2例(3.7%)であり,合併症としては気胸・膿胸を併発した症例を1例(1.9%)認めた。3)異物摘出法および成績(表3) 内視鏡的摘出は,53例(98.1%)で成功し,1例(1.9%)は外科的摘出となった。内視鏡的摘出手技の内訳は,ネット21例,把持鉗子18例,内視鏡で押し込む・吸引17例であった。 補助具としては,26例でオーバーチューブを使用しており,先端フードを7例で使用していた。合併症としては,食道損傷を3例に認めたが,抗潰瘍剤内服で全例治癒可能であった。4)症 例 症例1.異物による気胸・膿胸併発例 61歳,男性。主訴:胸部不快感。現病歴:2007年10月13日夕食に鯛のあらを食べた。14日朝より胸部違和感を認め,15日朝からは胸痛増強,食事摂取困難となり,近医を受診した。胸部CT検査では気胸を認め,上部消化管内視鏡検査では食道に魚骨が観察されたため,当院に救急搬送された。来院時理学的所見:血圧126/66,体温37.8℃,胸部右呼吸音低下,腹部上腹部圧痛を認めた。来院時検査:WBC 14300/μl, CRP4.6mg/dlといずれも高値を呈していたが,その他の検体検査は基準値内であった。来院時胸部CT検査では右肺に気胸を呈しており(図1,A,B),上部消化管内視鏡検査では,食道に魚骨が刺さっていた。内視鏡的に抜去し,クリップで穿孔部を縫縮した(図2)。第3病日の胸部CT検査では,気胸に加えて膿胸併発と診断(図1,C,D),胸腔鏡下胸腔内掻把術が施行され,経過良好退院となった。症例2.内視鏡的摘出困難例 60歳,男性。現病歴:工具のカッターを飲み込み当院に救急搬送された。上部消化管内視鏡検査では,食道中部にカッターが嵌頓しており,内視鏡的摘出困難であった。外科的に異物摘出術が施行され,摘出異物は3×2㎝大のカッター破片であった。術後経過は良好であった。(図.3)考察 臨床的には異物誤飲や食物を詰まらせることはたびたび認められることであり,異物のほとんどが自然排出される。しかし,10-20%の患者が内視鏡的摘出術を受け,1%以下の頻度で外科手術を必要とすると報告されている1)2)3)。 消化器内視鏡ガイドライン第3版4)では異物摘出術の適応を緊急性がある場合と緊急性がない場合に分け,緊急性がある場合は1)消化管壁を損傷する場合があるもの,2)腸閉塞をきたす可能性があるもの,3)毒性のある内容物を含有するものに分けら

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