南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-2-の病気や事故による後遺症などがある。周産期医学の発達によって超未熟児などの救えなかった命が救える時代になってきた。その結果命を取り留めた子供たちに自閉症などの障害が残りやすいことも報告されている3)。 2012年のLancetでは,子宮内あるいは周産期の異常を経験した22161人の赤ちゃんのうち6851人が何らかの障害を残している。脳性まひが16%,難聴が15%,盲が14%,てんかんが3%であったが,認知機能障害・発達障害・学習障害が45%と最も多かった4)。この報告で,Behav-ioral problems(行動異常)を呈する子供たちも1%存在し,彼らは幼い時にはわからなくとも成長に伴って行動異常が明らかになってくるという。 毎年宇和島市が行っている教育支援委員会では,就学前の子供たちのうち教育に何らかの配慮をする必要があるかもしれないという子供一人一人に適切な教育を受けるための検討が行われる。これは両親の気づきによって教育委員会に検討の依頼が提出されて動くものではあるが,この数が毎年右肩上がりで増えている。委員会での検討の結果,教育支援学校や支援学級,あるいは普通学級で通級指導*のいずれが適切かの判断が下される。支援学校や支援学級に通う子供たちは,身体障害や知的障害,情緒障害,盲・聾など色々で,かつその程度も軽重様々である。この子供たちを如何に教育していくか,如何に育てていくかが今問われている。虐  待 子育ては簡単ではない。健康な赤ちゃんでも両親が協力しながら一生懸命行うのが子育てである。障害を持ってしまった子の子育ての難しさは容易に想像できる。親は自分を責めながら,何処にもやり場のない憤りや諦めを感じながら,思い通りにいかない子供に対して感情が爆発する。そういったときに虐待は起こりやすい。 先天異常を持った子供,未熟児,NICUを巣立った児に被虐待児が多いとされ,その虐待をするのは実の母親が6割を占める5)。また,虐待 は世代間連鎖するという。つまり親は自分が育てられたように我が子を育てる。虐待を受けて育った子供は知らず知らずの間に自分が受けたと同じ事を我が子に繰り返しているのだ。小児虐待は身体的・心理的な暴力であり,子供の心に深い傷を残す。それを防ぐためには,早期に発見し,介入することが必要である。養育環境 親は子供が心身共に健全に育ってほしいと願う。とすればどのような養育環境を整えればよいのか。その昔,子供は大家族の中で育った。爺婆や多くの兄弟・姉妹に囲まれて,地域に住む様々な人の手を借りながら育った。両親が田畑で共働きをしていても多くの手がそれを補った。爺婆や年上の兄弟・姉妹が,幼い子の子守をし面倒を見てくれていた。このようにして子育ての文化が綿々と受け継がれてきた。  現在は少子高齢化で核家族,若者は爺婆を田舎に残して都会に職を求め,幼稚園の空きを待ちながら母親が孤軍奮闘で子育てをしている。その母親はどのように子育て*通常学級に在籍しながら障害の状態等に応じた特別の指導を特別な場で行う教育形態。

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