南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-32-られている。DWIは1.5テスラより薄いスライスでやや分解能の高い画像を得ている。どのシーケンスもトータルの撮像時間は同一であるが薄いスライス厚でマトリックスサイズを上げて撮像することが可能となったため,partial volume effectや体動により不明瞭であった微細な病変の検出がよりし易くなり,ほぼ全例が3Tとなっている(図6-A,B)。■前立腺…比較的拡大された画像が必要となる前立腺では,1.5テスラではSNRと撮像時間とのトレードオフが困難であった。3テスラではDWIも含め高SNRによりスライス厚を薄くしてマトリックス数を増やすことが可能となり,全例3テスラで検査を行っている(図6-C)。3テスラはMRSにおいても有効であるが7)ルーティンでの撮像はしていない。■全身性炎症…多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)患者の筋層内などに存在する炎症部位の全身検索にSTIR法を撮像する(図6-D)。全身を可能な限り短時間で撮像することが必要とされるが,T2横断像も必要で高信号域が認められた際の精査では約1時間の検査となる。臨床医からの評価は高いが,撮像を可能にしたのは開口径70センチの空間の威力であるという印象を持っている。【3テスラと1.5テスラの標準的な使い分け】 3テスラと1.5テスラ両方の装置を設置している施設では,検査依頼を行う医師も疾患別の有用性を承知することが望ましいが,多くの撮影室では撮像内容によってその場の判断で使い分けを行っているのが現状である。使い分けにおいては,3テスラと1.5テスラ間の描出能の違いというリスクを可能な限り抑え,それぞれのパフォーマンスを十分活かす撮像プログラムを作る事が重要で,診断に対する影響を撮像現場の技師が熟知していることが前提となる。【最後に―今後の当院におけるMRI運用―】 今後もMRI装置への最新テクノロジーの搭載は留まることが無く,様々な新しい画像提供競争が展開されるであろう。日本医用画像展(ITEM)では,新技術を載せた目を見張る次世代機が毎年展示されユーザーを待っている。毎年のことゆえ,最新機器として導入しても翌年には新型とは呼べないという現実もある。多くの施設が“最新機器を持って最新画像を提供している・・”と謳っているキャッチコピーの有効期限は短いと言わざるを得ない。 では,当院における現在は如何であろう。18年前に臨床検査技師による業務開始後,新病院移設,HIS/RIS導入,3テスラ増設などの経緯があったが,周囲の理解と指導により順調に業務を遂行してきた。3台体制後の課題としては,撮像内容のレベルに差がある3台の装置を臨床側の要望に合わせていかにバランスよく運用するかが重要となる。最新鋭機のSkyra(3テスラ)はメイン装置として今以上にあらゆる依頼にも対応することが必要で,3テスラ装置が不得意とされる撮像法を解消していくことが重要となる。Avanto(1.5テスラ)は今後はSkyraの補完的な役割を担うことになるため,装置能力や撮像シーケンスの条件を3テスラ装置に近づけ高いレベルの画像精度を追求することが必要である。また,2001年に導入したSymphony(1.5テスラ)は今後は脳外科や整形外科などのスクリー

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