南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-28-◆ T1値が延びT1コントラストが抑制されるが,血管の描出には有利となる。 【3テスラ装置による画像】■頭部~頸部  3テスラ装置では頭部病変から頸胸部に至るまで,薄いスライス厚を高いSNRで撮像することが可能になった1)。また,DWI画像の分解能が向上したことが大きなメリットである。どちらも病変部位の位置や大きさ,さらに性状などが精細に観察できるが,特にDWI画像は歪が軽減される撮像法が搭載されたことで画像のボケが減少し,診断が容易になった。微細な病変を高解像度,高コントラストで描出する意義は非常に大きく脳外科,耳鼻科,眼科などの診断には有用である。欠点はT1値が延長するためコントラストが出にくい点であるが,FLAIR-T1法など新たな撮像法も追加され対応できている。■脳血管 最も3テスラのメリットを受けているのが微小脳血管の描出能向上である。SNRの向上などにより脳血流の描出が格段に向上し,従来見えなかった動脈瘤から出ている微小血管が見えるようになった2)(図3-A:1.5テスラは血管が見えない。図3-B:3テスラは血管が見える)。このため動脈クリップや動脈コイルなどの手術における構造確認の術前診断がより正確になった。また,椎骨動脈解離症例では3D-True FISP法の高解像度シーケンスにより解離壁の描出が可能となり(図3-C),解離部位の特定や真腔と偽腔の観察などが容易となった。■脳機能画像検査:DTI (Diffusion Tensor Imaging)&Tractography,Functional-MRI,MRS(MR Spectroscopy) 掲載図は脳実質内腫瘍症例の画像であるが,DTIはSNRの高さにより3テスラで有用となり1),現在脳外科術中ナビゲーションの拡散テンソル画像として用いられている(図3-D)。Functional-MRIは磁化率効果が大きくなることによりBOLD効果を高感度で捉えることが可能となり精度が向上した2)(図3-E)。MRSは高磁場によって検出能が上がり,脳腫瘍や脳膿瘍などの鑑別に依頼が増えている(図3-F)。これらの脳機能画像検査は3テスラ装置本体に解析ソフトが搭載されており,撮像・解析・報告まで一連のルーティン業務として効率的に運用できている。■頸椎・胸椎・腰椎  3テスラ装置による脊椎領域の撮像は,SNRの高さを生かし等方向ボクセルや小さいボクセルの高分解撮像が可能となった3)。ボリュームデータによるリスライスが行えるなど,脊椎領域での効果は大きい。さらに高分解能と高コントラストにより髄内の高輝度領域や,髄内腫瘍の描出にもDWIなど有用なシーケンスが増え,多くの依頼が3テスラへとシフトしている(図4-A、B)。■手関節・肘関節・膝関節 関節領域は3テスラ装置の高SNRにより高分解能撮像が可能になった。固定の困難な撮像領域であっても撮像可能なコイルの柔軟性や,高解像度画像は新しく開発された大小のコイルによる効果が大きい。それらの要因も含めて1.5テスラより短い時間で,より微細な構造物を描出することが可能となったため,手関節は3テスラでの撮像が主体となっている(図4C,C,E)。■乳腺…3テスラ装置ではダイナミック撮像の面内ピクセルサイズ1㎜以下が望ましく4),高い分解能を時間の延長なしに得る

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