南予医学雑誌 第16巻
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高村、他:当院におけるMRIの進化と3テスラ画像南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-27-【2006年:‌“Avanto”の導入―全ての部位の画像のレベルアップ,特に心臓検査―】 2006年,Magnetom Avanto(Siemens社:1.5テスラ)がM10に替わって導入され(図2B),先行機のSymphonyと新たな2台体制で稼働した。この機種から画像精度が格段に向上した。つまり,Symphonyにみられた分解能と時間とのトレードオフによる画像の粗さなどが軽減され,短い時間で分解能が高い画像が得られると同時にアーチファクトの影響も少なくなり,より精度の高い診断が可能となった。受信コイルをマルチ化するなどハード面の性能も格段に進歩し,頭部から足先まで,非造影から造影まで全ての撮像で恩恵を受けることとなった。 Avantoを用いて当院ならではの画像を全国レベルで臨床に提供できたのは,心臓MRI検査Cardiac MRI(CMR)であった。当院の循環器内科では,虚血病変の診断能を高めるためATPによる負荷心筋パーフュージョンMRIを行った。これを施行するには高画像を提供できるMRI装置はもとより,負荷剤投与の専用ポンプと負荷検査時の循環器内科医師の立会,そして,複雑なルートの準備や撮像パラメーターなど多くの条件が求められ,当時実施する施設は全国的にも限られていた。私は当時最先端であった三重大学附属病院で撮像プロトコールを研修し,CMR担当の循環器内科医師は積極的に検査を依頼して,多くの症例で実績を重ねた。この結果,心臓MRI検査における撮像プロトコールが確立でき,欧米や国内施設へ当院での撮像プロトコールの技術資料を提供した。 【2014年:‌“Skyra”3テスラ機の導入―その性能と画像―】 2015年現在,MRI装置の設置台数は全国で6000台を超えているが,当然のごとくより高解像度の画像が得られる3テスラ装置の導入も増え,高磁場化が進んでいる。当院においても2014年にMagnetom Skyra(Siemens社:3テスラ)が増設導入され(図2C),図2に示す3台体制で稼働中である。 3テスラ装置が1.5テスラ装置との比較で一般的に言われていることは以下の通りである。それぞれの特徴が撮像シーケンスにより利点にも欠点にもなるが,使用してみるとシーケンスの巧妙な組み方やソフト技術の開発により,欠点を小さくし利点を大きくしていることが理解できてくる。◆ 導入装置はガントリの開口径が70センチと大きくなり,狭い空間が苦手な方も幾分か楽になった。◆ 1.5テスラに比較し約2倍のSNR(signal to noise ratio:信号雑音比)が得られるため,同一時間の検査で分解能が向上する。◆ シミング(撮影前の静磁場調節)に時間がかかるため,全体の撮像時間は短くならない。 ◆ 化学シフトは2倍に増加し,アーチファクトも増加するが,MRS(MR spectros-copy)には効果がある。◆撮像時の検査音は1.5テスラより大きい。◆ 磁化率効果は2倍増加し歪が出やすいが,磁化率の違いをみる撮像には有利。◆ 安全の指標であるSAR(specic absorp-tion rate:比吸収率)は4倍となり制限がかかりやすくシーケンスが走らない場合がある。

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