南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-26-【2001年:‌“Symphony”の導入―DWI画像,MRCP検査―】 2001年にMagnetom Symphony(Sie-mens社:1.5テスラ)が追加導入され,M10との2台体制になった(図2A)。この機種での最大の貢献は,拡散強調画像(Diffusion Weighted Image:DWI)画像を提供できたことである。それまで脳梗塞の急性期診断はCTであったが,その読影には習熟を要した。そこにDWI画像がもたらした恩恵は非常に大きく,梗塞発症後30分以降の病巣検出が可能となり,病状の程度の把握や予後の推測など,診断と治療に多大な効果をもたらした。 また,動脈瘤におけるMRA画像は,脳外科の依頼で当院独自の撮像パラメーターを作成した。これにより乱流の影響を受けない動脈瘤の描出,さらにshaded surface display(SSD)画像による3D画像構築が確立し,くも膜下出血患者がMRI画像のみで手術へ向かうことができるなど治療においても貢献した。この撮像シーケンスは,同機種での血管描出において県内外の他施設やメーカーからも高い評価を得ることができた。 また,MRCP(magnetic resonance chol-angiopancreatography)検査の登場も胆道系検査の在り方に大きな影響を及ぼした。Symphonyの導入以前は,胆石や胆のう炎などの胆道疾患にはERCP(endscopic retrograde cholangiopancreatography)検査を行っていた。ERCPは内視鏡にて直接胆道系の観察が可能で,胆石を採取するなどの治療も可能である。しかし,時として膵炎を誘発することがあり,検査後の観察も重要で侵襲的検査であるがゆえの患者負担もあった。一方,MRCP検査は非侵襲的であり,陰性造影剤を飲用することにより消化管信号を抑制し,胆汁や膵液などの液体を高信号で描出,低信号で描出される胆嚢内や胆管内の胆石を検出する。さらに,腹腔鏡下胆嚢摘出術の際には,胆嚢管の走行や胆管分岐の変異,総胆管から膵管の合流部異常など多くの情報を非侵襲的に得ることが可能となった。これにより,2000年までは胆道系画像検査はERCP検査のみであったが,Symphonyの導入後は半数がMRCP検査となり,治療までの検査の在り方が大きく変わった。現在では夜間休日の緊急検査にも活用され,胆道系疾患の診断に不可欠な検査となっている。(図2-A)Symphony 1.5T(図2-B) Avanto 1.5T(図2-C) Skyra 3T

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