南予医学雑誌 第16巻
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高村、他:当院におけるMRIの進化と3テスラ画像南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-25-はじめに MRI(Magnetic Resonance Imaging)が新たな画像診断法として臨床の現場に導入されはじめ30年ほどになるが,その間,MRI装置のハードウェアやソフトウェアの性能は様々な新技術の導入により飛躍的に進歩し,診断能が格段に向上した。また,各メーカーは施設の種類や用途に応じた装置を開発販売し,日本におけるMRI装置の保有台数はアメリカに次ぎ多くなっている。今や多くの情報量を提供できるMRIは,診療に不可欠なツールとなっている。さらに,各施設の装置購入においては,施設の診断能の高さをアピールすることが装置購入の要件となり,導入後も患者に対し最新のMRI画像が提供できることをホームページ等で謳い,施設をアピールする一つの武器となっている。 そのような環境のなか,当院におけるMRI装置の導入から今日までの運用の推移をまとめた。さらに2014年に導入した3テスラ装置の撮像環境とその最新画像について若干のデータを添えて考察する。【1991年:当院初のMRI装置 “M10”の導入】 市立宇和島病院では1991年にMRI装置Magnetom M10 (Siemens社:1.0テスラ)を導入した(図1)。南予地方での導入は当院が初めてで,当時は“脳ドックにMRIが活用される”という記事が新聞でもトピックスとなった。このMRI装置のマグネット本体は,現在のMRI装置の2倍はあろうかというような非常に大きな箱もの(図1)で,漏洩磁場を防御するために装置を入れる検査室もかなりのスペースが必要であった。そして画像評価については,脳の動脈瘤や腫瘍,脊椎のヘルニアや骨折,腹部の病変などについて有用な所見が提供できていた。しかし,現在と比べると画像の分解能は劣るうえ,検査時間も同じシーケンスで約3倍かかっていた。非常に狭く長く,暗い空間に長い時間入って検査を受ける被験者の苦痛は現在の比ではなかった。しかし,当時はMRI画像を見たら皆が驚くほど“目新しく”,“すごい”画像であった。その後,1998年に診療放射線技師から臨床検査技師による運用となった。(図1)Magnetom M10 1.0T

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