南予医学雑誌 第16巻
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岡、他:ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術:当院での初期例南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-15-(写真3)器具症例を対象とする施設もあるが,当院ではLRPの経験があったので体積の制限は設けなかった。同様の理由で経尿道的前立腺手術の既往例,術前ホルモン療法の既往例も対象外とはしなかった。頭低位で手術をするため眼圧の上昇に考慮し全例術前に眼科検診を実施したが,今回の対象者に眼圧の高い症例はなかった。<手術方法> 術式はPatelらの方法に準じて行っている3)。全身麻酔下(硬膜外麻酔の併用なし)に砕石位とする。臍上部を2-3㎝切開し腹腔内に入る。12㎜のカメラポートを挿入し切開部は1-0絹糸で縫縮し気密を保つ。カメラで腹腔内を確認しながら気腹圧を12㎜Hgとする。8㎜のロボットアーム用のポートを3本挿入する。助手用の10㎜ポート,5㎜ポートも挿入する。25度の頭低位としda Vinciをドッキングする。術者がコンソールに座りロボット操作を開始する。ロボットアーム右にハサミ(monopolar),左にメリーランド(bipolar)をセットする(写真3)。縫合の際は両手とも持針器に変更する。術者はカメラ,右手アーム,左手アーム以外に第3アームを操作できるため自分で術野の展開が可能である。 腹膜切開し膀胱前腔を開放して前立腺前面に達する。前立腺周囲脂肪織を除去後,内骨盤筋膜を剥離して前立腺側面を露出する。膀胱頚部を切開し前立腺から膀胱を離断する(写真4)。精管,精嚢を剥離後De-novier筋膜を切開して前立腺と直腸の間を剥離し両側を走行する神経血管束を処理する(性機能温存のため神経血管束を温存することもある)。次に前立腺尖部の処理に移る。癌の根治性と尿禁制の確保という相反する目的を達成させるために重要な部分である。前立腺尖部はすぐ末梢に尿道括約筋がありその背側に静脈束が絡みつくように走行している。先に静脈束を結紮すると前立腺尖部と尿道の位置関係が分かりにくくなり解剖学的手術が困難となる。しかし,大量出血を招く可能性があるため,RRP,LRPの場合はやむを得ず静脈束を結紮後に離断していた。RALRPでは迅速な縫合が可能なため先に静脈束を離断し前立腺尖部左手 メリーランド3rd アーム右手 ハサミ

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