南予医学雑誌 第16巻
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岡、他:ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術:当院での初期例南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-13- 一方,手術支援ロボットは,元々戦場での手術を遠隔で行うシステムとしてアメリカで開発が始まった。その後Intuitive Surgical社が民間応用を目指し,da Vinci Surgical SystemTM(以下,da Vinci)を完成させた。da Vinciは2000年にアメリカ食品医薬品局(FDA)に腹腔鏡下手術を支援するロボットとして認可され,2001年にはロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(robot-assisted laparoscopic radical pros-tatectomy;以下,RALRP)が認可された。2014年にはアメリカでの前立腺全摘に占めるRALRPの割合は80%にまで達している2)。 da Vinciはサージョンコンソール(写真1),ペイシェントカート(写真2),ビジョンカート(光源,画像をコントロールする機械)で構成され,それぞれが回線でつながれている。その特徴は以下のとおりである。3次元カメラで10倍に拡大された視野を確保できること。術者の手の動きに対して鉗子が動く実際の距離を縮小することができ,手ぶれ補正機能もあるため精密な操作ができること。鉗子の先端に関節があり自由な方向に動かせ,その可動範囲が広いため従来ではできない方向への切開,縫合が可能であること。ポート挿入部の一点を支点としてロボットアームが動くように設計されているため,腹壁へのダメージがLRPより少ないことなどである。そのため手術時間の短縮,出血量の減少,機能温存や癌の根治性の向上が期待され,より低侵襲な手術が可能である。また術者の手技習得時間の短縮にも寄与している。日本では2012年4月に保険適応となり,2014年6月の時点で183台が導入され手術数も増加してきた(図1)。現在保険適応のある手術は前立腺癌に対する前立腺全摘術のみであるが,自費診療などで腎癌部分切除,膀胱全摘,胃癌手術,直腸癌手術が施行されている。当院では第2世代のda Vinci Sを導入し,2014年7月から稼働が開始した。(写真1)サージョンコンソール:術者が操作する機械

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