南予医学雑誌 第16巻
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南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-102-今後は看護記録等の公開も予定しており,これまで以上に患者の安心感や地域医療の質の向上に役立つと期待をしています。 また,2015年8月からはこのシステムを利用して,回復期病院(JCHO宇和島病院・宇和島徳洲会病院・真網代くじらリハビリテーション病院・伊予病院)との間で脳卒中地域連携パスの運用を開始しました。その結果,従来の紙媒体から電子媒体(Excel)によるデータの送受信が可能となり,利便性が大幅に向上しています。 さらに,このシステムでは外部からの不正アクセス及び情報漏洩を防ぐために関係省庁のガイドラインに準拠したセキュリティも確保しているとともに,利用医からは閲覧している診療情報を印刷・コピーできない仕組みとしています。システムの成果 オープンカルテシステムについては,利用医から「紹介・逆紹介した患者の診療データを迅速,詳細に把握することができ,適切な診断ができるようになった」といった直接的な成果が聞かれるほかに,「入院や退院といった情報や当院での既往歴,過去に受けた検査結果などの情報が患者や家族とのコミュニケーションに役立つ」と高い評価を得ています。また,患者にとっても投薬や検査の重複を防ぐことができ,医療費負担の軽減になるほか,当院に入院中でも利用医(かかりつけの医師)がシステムにアクセスして自身の体の状態を見てくれることで,大きな安心感につながっています。また,脳卒中地域連携パスの電子化については,電子媒体に不慣れな人にとっては使用しにくい面があるものの,いったん運用が軌道にのれば入力業務の効率化やパテムの構築を目指して,1年前にプロジェクトチームを発足しました。このチームでは,鶴岡副院長をリーダーとし医局・看護部・医事課・情報管理室・診療情報管理室・地域連携室から代表者が出席し,「カルテは患者のもの」という基本理念のもと,3回のキックオフミーティングと7回のチーム会議を開催し準備を進めてきました。 また,2次医療圏で過去に当院との間で紹介・逆紹介の実績のある医療機関137施設を対象に,システム導入に対するニーズ調査を実施しところ,回答のあった施設のうち約8割の施設から「システムを利用してみたい」との結果を得ることができました。これにより,地域の医療機関から高い関心が寄せられていることが分かり,チームメンバーも大いに勇気づけられました。システムの概要 このシステムには,ソーシャルワーカー等の相談記録や紹介状・返書を管理する院内機能と,オープンカルテシステムや脳卒中地域連携パスを運用する院外機能があります。 オープンカルテシステムとは,インターネットVPN(Virtual Private Network)を介し当院と地域の医療機関をネットワークで結び,患者の同意のもと当院の診療情報をリアルタイムに地域の医師に閲覧してもらうシステムです(図1)。 2015年11月末現在の実績では,2次医療圏内(宇和島市,西予市,愛南町,松野町,鬼北町)の37施設がネットワークに参加し,登録患者数はすでに約1,000人,アクセス数は約4,800件に達しました(図2)。閲覧できる主な情報は,医師の記録や検査結果,画像情報,レポート,処方歴などです。

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