南予医学雑誌 第16巻
10/118

南予医誌 Vol.16 No. 1 2015-8-動は自家用車かバスが主であることも特徴といえる。5)小児救急の特徴 小児救急の全国的な特徴として,時間外患者の多くが入院を必要としない軽症の患者で占められることがあげられる。平成22年の日本救急医学会小児救急特別委員会の調査によると,救急受診者全体に占める小児患者の割合はそれぞれ外来数16.4%,入院数11.0%,救急車5.7%,ICU入室2.4%,CPA2.3%であったと報告されている2)。すなわち,外来患者の比率に比べて,重症患者の比率が低いことが示されている。平成24年度の総務省消防庁の「救急・救助の現況」によると,救急搬送における軽症,中等症,重症,死亡の割合は,成人がそれぞれ48%, 40%, 10%, 2%であったのに対し,小児ではそれぞれ77%, 21%, 2%, 0.1%であり,成人と比較して中等症患者は1/2,重症患者は1/5であった3)。時間外外来患者のみならず,救急搬送においても,小児患者の受診時における重症度は低いことが示唆されている。 また,救急では内科系と小児科系,すなわち成人と小児の救急が独立していることも多い。前述の医師・歯科医師・薬剤師調査の概況によると平成24年の内科系医師数は102,956名に対し,小児科医は16,340名と内科系医師の15.9%に過ぎず,約6.3倍の開きがあった。内科系は更に細分化されており,単純に仕事量の比較は難しいが,小児救急を小児科医だけで行う場合,人的不足があることが示唆される。6)宇和島圏内で小児科を標榜する病院 宇和島圏内で,小児科を標榜する総合病院は合計4病院である。そのうち,公立病院の,平成26年の時間外における小児の受診数は市立宇和島病院3,722名,県立南宇和病院756名であった。また,平成26年の小児患者の救急搬送数は市立宇和島病院162件,県立南宇和病院8件であった。なお,市立津島病院は週1回の外来のみであり,時間外受診ならびに救急車の搬送はほとんどなかった。 小児科医の集約化された診療体制のため,救急車のほとんどが連携強化病院である市立宇和島病院に搬送されていた。時間外の小児患者数は市立宇和島病院が最も多かった。しかし,小児人口が宇和島市の約4分の1ある愛南町から市立宇和島病院までは自家用車にて約1時間かかるため,愛南町にある県立南宇和病院での時間外受診の需要も大きいことが示唆された。7) 宇和島圏の小児人口 平成26年10月1日現在で,宇和島市の15歳未満の小児人口は9,083名であり,平成17年の11,875名と比較して,24%減少している。また,日本経済新聞による人口減少地図によると2040年までの若年女性の増減率は,宇和島圏では-57.9%から-79.0%である4)。この減少率は全国や愛媛県の他の市町村と比較しても高い。そのため,今後宇和島圏では他の地域よりも早く少子化や過疎化が進んでいくことが予想される。8)小児救急の問題点 全国的な小児救急の特徴として,以下の4点が挙げられる。① 患者は軽症ではあるが,両親の不安が強く,受診数が多い傾向がある。

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る