南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-80-抗生剤治療を続け,CTにて再評価を行い,反応性に乏しい4名についてドレナージがなされた。結局外科的介入を必要としたのは8名(21%)であった。このように,眼窩骨膜下膿瘍や眼球運動障害を有する例でも,保存的治療が有効である場合がある。無論,画像による治療効果の評価は必要だが,手術適応に関してはまだ議論の余地があると考えられる。 本症例でも,初診時に頭部CT所見より左眼窩内の骨膜下膿瘍が存在し,眼球の内転運動障害を認めていたが,抗生剤の投与を開始し,眼瞼周囲の腫脹・発赤所見は24時間以内に消退し,画像所見上も病変部位の縮小を認めた。治療後も耳鼻科・眼科的評価を行い,抗生剤投与のみで治療可能と判断した。ドレナージを行わなかったため,膿の培養を提出しておらず,原因菌は同定できなかった。そのため,PRSPやBLNARなどのペニシリン耐性菌が原因である可能性も考慮し,ABPC/SBTに加え,MEPMを併用した。 副鼻腔炎に眼窩蜂窩織炎を合併した場合には抗生剤治療を基本とする。ただし,CTやMRIなどの画像検査を用いて,鼻性眼窩内合併症の評価を行う必要がある。併せて耳鼻科や眼科的に評価を行い,炎症が外眼筋や視神経にまで及び,眼球運動障害や視力障害をきたす危険性もあると判断した場合には,外科的治療の時期を適切に判断することが重要である。また,保存的治療を続ける場合でも,画像検査での病変の再評価を行い,改善を確認する必要がある。改善が乏しければ,やはり速やかに外科的介入を考慮しなければならない。参考文献1)  菅原志保子, 高橋秀弘, 荒川浩, 清水浩, 他:副鼻腔炎から波及した眼窩蜂窩織炎の1例.小児科診療2001; 10: 161-164.2)  岸本健治, 原田恒和:小児における顔面蜂窩織炎の臨床的検討. 日小医会報 2008; 35: 145-148.3)  山岸由佳, 名田匡利, 横山壽一, 末松寛之, 他:副鼻腔炎に併発した眼窩蜂窩織炎に関する臨床的検討. 日本外科感染症学会雑誌 2010; 7: 299-306.4)  加藤格, 今村壽宏, 伊藤雄伍, 神谷尚宏, 他:眼窩周囲炎・副鼻腔炎に続発した眼窩蜂窩織炎の1例. 小児科臨床 2006; 59: 131-136.5)  Patt BS, Manning SC: Blindness re-sulting from orbital complications of sinusitis. Otolaryngol Head Neck Surg 1991; 104(6): 789-795.6)  Fanella S, Singer A, Embree J: Presen-tation and management of pediatric orbital cellulitis. Can J Infect Dis Med Microbiol 2011; 22(3): 97-100.

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