浅見、他:小児眼窩蜂窩織炎の一例南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-79-進展している可能性がある。また,その場合,臨床症状や血液検査所見からだけでは眼窩蜂窩織炎の診断が困難であり,画像検査,眼科的検査が必要である。CTにて眼窩に及ぶ炎症の存在を確認することや,眼科診察にて眼球突出,眼球運動時痛,外眼筋障害などの症状があれば眼窩蜂窩織炎と診断する2,3)。 治療法としては, 入院,安静の上,抗生剤投与を行う。一般的に起炎菌はStrepto-coccus pneumoniae, Haemophilus influen-zae, Moraxella catarrhalis が多く,まれに緑膿菌や嫌気性菌などが原因となる。抗生剤選択の際には,グラム陽性菌,陰性菌,嫌気性菌を広くカバーするものを選択する。多くの場合は治療反応性がよく短期間で治癒するが,炎症が長期にわたって存在する症例では不可逆的な視神経障害を引き起こすことがある4) 。 眼窩内炎症は,その炎症の波及段階で分類され,古典的な分類法としてChandlerの分類があり,5段階に分類される(図5)。Group Ⅰは眼瞼や結膜の浮腫,Group Ⅱは眼窩内の浮腫性変化,Group Ⅲは眼窩骨壁と骨膜の間に膿瘍を形成した状態,Group Ⅳは眼窩内容内への膿の貯留,Group Ⅴは海綿静脈洞血栓症,と分類されている。一般に膿瘍を形成するようなGroup Ⅲ以上の症例においては,緊急手術の適応があるとされている。 Pattら5)は,①抗生剤投与に抵抗して24時間以内に症状が悪化するもの,②48~72時間の抗生剤投与においても症状の改善がないもの,③視力や眼球運動障害があるもの,④CTで膿瘍形成を指摘されたもの,が手術の適応とされると提唱した。一方で,Fanellaら6)の示した症例ではその限りではなかった。彼らの症例では,眼窩蜂窩織炎を呈した38名の患者のうち,12名(31.5%)は骨膜下膿瘍を合併していた。そのうち4名が直ちに外科的ドレナージの適応となった。他の例についても,その後(図5) 眼窩内炎症の分類(Chandlerの分類)
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