南予医学雑誌 第15巻
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杉本、他:糖尿病腎症患者への食事指導南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-71-の食生活,欠食・間食・夜食・飲酒・偏食などの問題を複数かかえていることが多い。このような患者には,実際の生活に則した献立を自分で考えて組み立てさせ,管理栄養士の助言により本人が修正していく指導が有用である2)。血糖コントロール不良例では主菜(肉や魚)の摂取量が多く,良好例では野菜摂取量が多いという報告3)があり,野菜摂取量を増やすための具体的な方法や,惣菜の選び方の教育が重要であると考える。また,指導時には,行動変容ステージの無関心期,関心期,準備期で有効とされる意識の高揚,感情的経験,自己の再評価の考え方を意識させながら行うと効果的である。そのような指導により患者は自ら糖尿病治療行動の問題点に気づくと同時に自己効力感(自己に対する信頼感や有能感)を高めることができ,食習慣と運動習慣の改善に繋がりやすいからである4)。人は昔から食べ慣れた地域の味を美味しく感じる5)。そのため,味覚形成の備わる幼少期や学童期から正しい食習慣を身につけることが重要である6)。食べ慣れた味が健康食となれば,成人後の食生活の修正が容易であると考える。また,南予地域は高齢化が著しく,高齢者が一人暮らしを継続するために必要な調理技術の修得,食材購入環境の整備のほか,地域サポート連携等も重要であり7),これらの環境を整えていくことも今後の課題である。終りに 健康を維持する為には,自身に必要な食物や栄養素の「適正量」を個人が把握し,食行動に繋げる必要がある。そのためには,情報提供の他に,日々の適正な食事の必要性を実感できるアプローチを行い,繰り返し伝えることで習慣付けさせることが重要であると考える。「病院で栄養指導を受けてはじめて適正量を知った」「もっと前から知っていればこんなことにはならなかった」という患者の声も多く,正しい食事療法の啓蒙が重要であると考えられた。糖尿病をはじめとする生活習慣病は,本人の意識と努力次第で回避が可能であることを改めて示していきたい。参考文献1)  杉本みき, 岡崎真由美, 成田玲子, 他: 糖尿病患者における栄養食事指導介入と栄養摂取量についての検討.日本病態栄養学会誌 2014; 17: 111.2)  八幡和明,江部直子,丸山順子:独身男性及び男性単身者の食生活上の問題点.糖尿病 1999; 42 suppl. 1: 213.3)  鈴野千鶴子,安井典子,脇水玲子,他:2型糖尿病独身男性患者の血糖コントロールに関与する要因の一考察.石川県立中央病院医学誌 2005; 27: 43-46.4)  中川幸恵,森谷きよし,伊藤和枝,他:2型糖尿病患者における健康行動理論を加えた継続栄養指導の有用性の検討.天使大学紀要 2013; 14: 19-39.5)  藤井文子:地域に根ざした病院食の提供を栄養管理につなげる.日本栄養士会雑誌 2014; 57: 14.6)  二木武,帆足英一,川井尚,他:新版小児の発達栄養行動.医歯薬出版,東京,1995: pp30-44.7)  武山清子,鈴木道子:一人暮らし後期高齢者の食生活を支える諸要因.栄養学雑誌 2013; 71: 112-119.

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