南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-66-はじめに 糖尿病患者において食生活の是正は最大の課題である。食の欧米化による脂肪摂取量の増加や野菜摂取不足が,糖尿病の発症や合併症の進行に大きく影響している。平成24年国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると,糖尿病が強く疑われる成人男女は約950万人と推計されている。特に,愛媛県の野菜摂取量は男性265g/日(42位),女性267g/日(36位)と全国の中でも少ない。南予地域は豊かな自然環境に恵まれ食物供給が豊富なため,必要量以上の食物を摂取しやすい環境にあるといえる。また,人々は甘辛い味付けを好む傾向にあり,糖分・塩分の過剰摂取に繋がりやすい。今回,無職で独居の男性で,中食(弁当や惣菜などの調理済み食品を自宅で食べること)中心の食生活の糖尿病患者に関わった。退院後の継続した食事療法が困難であると考えられた患者に,効果的な栄養食事指導を行うことができたので報告する。 症   例 【症 例】56歳男性  【主 訴】頻尿 【既往歴】特記すべきことなし 【家族歴】特記すべきことなし 【現病歴】2013年2月に頻尿を主訴に当院泌尿器科を受診し,ネフローゼ症候群の診断を受けた。糖尿病腎症の疑いにより内科を受診し,BS 332 mg/dL,HbA1c 8.3 %,抗GAD抗体 1.3 U/mL未満,尿中タンパク(4+),尿糖(4+)で2型糖尿病の診断であった。入院を勧められたが拒否していた。同年10月に全身浮腫の増悪を認め,糖尿病腎症の診断で入院となった。  【生活歴】喫煙:なし, 飲酒:缶チューハイ350 mL/週 【身体所見】身長163.5 ㎝,体重78.5 ㎏,BMI 29.4 kg/㎡.血圧161/91 ㎜Hg,脈拍100/分,整.体温36.4 ℃.心雑音なし,腹部はやや膨隆,軟.下腿・足背の浮腫あり,浮腫のためアキレス腱反射・振動覚は判定困難,下肢のしびれ,間欠性跛行なし,足病変に陥入爪あり.  【血液生化学・尿検査所見】WBC 5400 /μL,RBC 358×104 /μL,Hb11.3 g/dL,Ht 31.9 %, TP 6.1 g/dL, Alb 3.2 g/dL,空腹時BS 169 mg/dL,HbA1c 8.0 %, BUN 22 mg/dL,Cre 0.95 mg/dL,eGFR 64.6 mL/min/1.73 m2,CRP 0.73 mg/dL,Na 142 mEq/L,K 4.3 mEq/L, UA 6.8 mg/dL,HDL-Cho 32 mg/dL ,LDL-Cho 147 mg/dL,TG 109 mg/dL.空腹時IRI 2.8 μU/mL,食前CPR 1.9 ng/dL・食後2時間CPR 1.9 ng/dL,HOMA-R 1.2,抗GAD抗体 1.3 U/mL未満.尿中タンパク(4+.定量7.56 g/日),糖(3+),潜血(2+),尿中CPR 20.2 μg/日.胸部XPで心胸比59.2 %,両側胸水あり.胸部CTで冠動脈に石灰化あり.脈波伝播速度(PWV)右15.6 m/秒,左15.9 m/秒.足関節上腕血圧比(ABI)右1.37,左1.30.心電図RR間隔変動係数(CVR-R) 1.90 %.【入院中の経過】 入院時(2013年10月),CKD(慢性腎臓病)の重症度分類はG2A3,糖尿病腎症は第3期Bであった(最新の病期分類では糖尿病腎症第3期に相当)。食事基準に則り,

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