南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-62-れば中間リスクとなる。中間リスクの腫瘍では,腎機能障害があれば高リスクとなる。 本症例は放射線療法前の血液検査成績ではカリウム,リン,尿酸,腎機能は正常値であり血液検査上は低リスクの症例であった。疾患リスクでもマントル細胞リンパ腫は低リスクとなる。以上のことから,本症例はTLS発症予測としては低リスクと考えられ,TLSの予防は特に必要ないと判断していた。しかし,照射2日目という早期にTLSを発症した。本症例のように放射線療法でTLSを生じた報告は,固形がんで4例5),6),7),8),造血器腫瘍で3例1),2),3)と少ない。 今回TLSが生じた原因は,本症例が放射線に対する感受性が良好で,放射線療法により短期的に著明な腫瘍崩壊が生じたためと考えられる。一般的にマントル細胞リンパ腫の放射線感受性は高く,再発難治例においても,involved-eld radiotherapy (IFRT)により,低線量で64%の完全完解と100%の局所奏功率が得られたとの報告9) があり,再発例の局所コントロールに有効である。本症例においても2Gy×2回の照射のみで腫瘍は著明に縮小しており,放射線感受性は良好であった。過去に報告された,放射線療法によりTLSを生じた造血器腫瘍3症例1),2),3)でも,6Gy~7.5Gy照射後と放射線療法開始後早期にTLSが生じている。 分子標的治療薬が登場し,従来の化学療法に抵抗性を示す腫瘍にも著効を示し,これまで報告のなかったがん腫にもTLS発症の報告が散見されるようになった10),11),12)。対策としてTLSの診療ガイダンス13)が作成されたが,TLSの診療ガイダンスの疾患リスクは,放射線療法時の評価にも適応可能かの明確なエビデンスはない。本症例においては化学療法では低リスクと判定される(図3)放射線療法32Gy/16回施行後の腹部造影CT。赤丸内の放射線療法4Gy後の同部位の腫瘍は更に縮小しており、残存部分は造影効果不良として認める。(図3)放射線療法32Gy/16回終了後の腹部造影CT

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