南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-4-する治療法を開発すべく80年代に入りビンクリスチン,アドリアマイシン,デキサメタゾンを用いたVAD療法をはじめとする多剤併用化学療法や大量デキサメタゾン療法のなど様々な治療法が報告された。これらの治療法はMP療法と比較して高い奏効率が得られるものの,全生存率で上回ることができず,MP療法を凌ぐ有用性は証明されなかった6)。これらの結果を受けて,65歳未満の若年者を対象に自家造血幹細胞移植を用いた大量化学療法の導入が図られた。各国で様々な臨床試験が行われたが,9つの無作為比較試験による2411例のメタアナライシスで,自家造血幹細胞移植によって全生存の延長は得られないものの,無増悪生存期間の延長が得られると報告された7)。これらの報告より臓器機能の保たれた65歳未満の若年者に対しては,自家造血幹細胞移植が一般に推奨されるようになった。しかし,それでも再発・再燃する症例があり,治療関連死のリスクが通常の化学療法より3倍高いことから注意が必要であり,新たな治療法の開発が望まれていた7)。以上より本疾患に対して治癒をもたらす治療法はなく,治療成績は2000年頃まで大きな変化はなかった。 しかし,病態解明の進歩に伴い2000年以降,ボルテゾミブ,サリドマイド,レナリドマイド等の新規薬剤により,治療法は劇的に変化した。多発性骨髄腫においてはnuclear factor-kappa B(NF-κB)が恒常的に活性化されており8),NF-κBの活性化に寄与するプロテアソームをターゲットにしたボルテゾミブが2006年に本邦で承認された。ボルテゾミブは骨髄腫細胞に直接作用するのみならず,骨髄の微小環境にも作用して,骨髄腫細胞と骨髄間質細胞の接着や,これらの細胞の接着で分泌される細胞増殖に関与するサイトカインを抑制することで抗腫瘍効果を発揮する。(図2) 多発性骨髄腫に対する治療法の変遷

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