南予医学雑誌 第15巻
52/132

南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-50-受稿日 平成26年2月25日受理日 平成26年7月1日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 内科 宮内 省蔵はじめに 高血糖性の糖尿病緊急症として糖尿病性ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis;以下DKA)と高浸透圧高血糖症候群(Hy-perosmolar hyperglycemic syndrome;以下 HHS)がある。前者は1型糖尿病に代表される絶対的インスリン欠乏状態により発症し,後者は感染や脱水などを契機とする相対的インスリン欠乏状態により発症する。今回我々は,絶対的インスリン欠乏状態にもかかわらずHHSを呈した,1型糖尿病と慢性膵炎の合併例を経験したので報告する。要   旨 症例は51歳男性。2012年末頃より全身倦怠感,視力低下,口渇感あり。2013年10月3日に眼科を受診し,HbA1c 15.9 %,血糖値 819 mg/dLを指摘され,当科紹介となった。血液・尿検査でインスリン分泌高度低下,抗GAD抗体陽性,ケトン体陰性,血漿浸透圧上昇を認め,高浸透圧高血糖症候群と診断した。また,腹部CTで慢性膵炎の合併を認めた。入院後,生理食塩水補液と速効型インスリン持続投与で治療を開始した。血糖値改善後,強化インスリン療法を開始した。空腹時の低血糖,食後の高血糖を呈したが,最終的に150 mg/dLから200 mg/dL程度で推移した。インスリン分泌高度低下例でも,膵内外分泌機能障害を伴う場合,ケトアシドーシスが生じない可能性があり注意が必要である。 (南予医誌 2014; 15: 50- 57.)Key Words:高浸透圧高血糖症候群,1型糖尿病,慢性膵炎,グルカゴン  高浸透圧高血糖症候群を発症した慢性膵炎合併1型糖尿病の1例 年 森 慎 一(研修医),江 口   透,宮 内 省 蔵 市立宇和島病院 内科   症例報告

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る