南予医学雑誌 第15巻
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川口、他:一次救命処置講習会の受講記録分析南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-43-序   言 突然,心停止に陥った傷病者に対し,良質な胸骨圧迫や自動体外式除細動器(AED)を使用した一次救命処置が速やかに実施できれば,後遺症なしに救命できる可能性が高くなる1)。医療従事者は職場で入院患者や外来患者などの心停止に遭遇する可能性がある。また地域や家庭においても,指導的な立場で蘇生処置を行うことが期待されている2)。 心停止傷病者に対するAEDの使用は医療行為に含まれ,医師でない者が反復継続する意思をもって行えば,医師法第17 条違反に問われる。しかし,2004年の厚生省の通達で,救命の現場に居合わせた一般市民がAEDを用いることには一般的に反復継続性が認められず,同条違反にはならないとされた(医政発第0701001号,2004年7月1日)。 一方,業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止者に対し応急の対応をすることが期待,想定されている医療従事者については,①医師等を探す努力をしても見つからない等,医師等による速やかな対応を得ることが困難であること,②使用者が対象者の意識・呼吸がないことを確認していること,③使用者がAED使用に必要な講習を受けていること,④使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ていること,の4条件を満たした場合に,AEDの使用が許された3)。 非医師医療従事者のための「AEDの使用に必要な講習」について明白な規定はないが,「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED) の使用のあり方検討会報告書」(2013年7月1日) 4) は一般市民に対する講習プログラムを提示している。その一般目標は,1)救命の連鎖と早期除細動の重要性を理解できる,2)AED到着までの基本的心肺蘇生処置を実施できる,3)AEDを正しく作動させ安全に使用できる,となっており,合計180分のプログラムの中に,「基本的心肺蘇生処置」50分,「AEDの実技」35分,「知識とシナリオを利用した実技の確認」45分の,合わせて130分の実技時間を設けている。 われわれが対象としたのは,主に看護師,放射線技師,薬剤師など,医学教育の素地のある医療職であるので,上記のプログラムを短縮して行うことも可能ではあった。しかし,心肺蘇生法が複数回のガイドライン改定により変化していること,AEDに関しては当時多くの職員が訓練を受けたことがなかったこと,事務職員なども受講対象としたことから,一般市民用の上記プログラムを適用した。 そして,急変時対応の教育として,全職員が法律的にも知識・技術の上でもAEDを使用できるようになることを目標に,一次救命処置講習会を計画した。2008年3月から,年2回のシミュレーション訓練を含む3時間講習を実施し,その受講記録を蓄積して来た。今回,過去10回の講習会によって,常勤職員総数を超える受講者数を記録した段階で,どの程度の受講率を達成できたかを集計し,講習会実施の成果について検討した。対象と方法 当院職員と院外の医療施設などの職員や地域消防職員を対象として,受講者を募集した。なお,受講者募集時には毎回,各部署の職員の氏名と受講の有無,受講の日時

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