南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-2-療選択薬とされていた。これらの治療薬剤を用いても完治は難しく,治癒に導ける唯一の治療法は造血幹細胞移植と考えられていた。しかし,造血幹細胞移植は大量の抗がん剤投与を行うため,早期死亡の問題が残されていた。 しかし2001年にBCR-ABLチロシンキナーゼを標的にしたイマチニブの登場によりCMLの治療成績は劇的に向上し,造血幹細胞移植の適応が激減した。イマチニブとインターフェロン+ Ara-Cのランダム化比較試験IRIS study(International Random-ized Study of Interferon + AraC vs STI571)で,未治療CML患者に対する12か月時点での血液学的寛解率(96% VS 67%)や細胞遺伝学的寛解率(68% VS 7%)で,イマチニブ群が圧倒的に有効であると報告された1)。またIRIS 試験におけるイマチニブ投与を受けた慢性期CMLの患者553人の8年間の追跡結果が発表され,全生存率85%(CML関連死による死亡のみを対象とした8年間全生存率93%)と長期投与における安全性についても報告された2)。 一方,イマチニブ耐性・不耐容例も少なくなく,長期投与できない症例が存在した。イマチニブ耐性の原因として,BCR-ABL遺伝子の点突然変異,BCR-ABL遺伝子の増殖,BCR-ABL mRNAの増加,他のがん遺伝子の活性化等が原因として考えられているが,その中でもBCR-ABL遺伝子変異の問題が重要で,耐性・再発例の60%にBCR-ABL変異を認めることが知られている。これらの問題に対応するために新規チロシンキナーゼ阻害剤(Tyrosine Kinase Inhibitor : 以下TKI)が開発されてきた。 第二世代TKIであるダサチニブは,マルチキナーゼ阻害薬として開発され,BCR-ABLチロシンキナーゼ以外にsrcファミリーキナーゼやc-kitキナーゼ等も阻害することが知られている。BCR-ABLに対す(図1) CMLに対する治療法の変遷

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