南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-34-年から2014年7月に施行したATH, LAVH症例と比較検討した。 当院では, TLHの手技を以下のように統一し, 施行している。①  Koh Cup2)をつけた子宮マニピュレーターを装着:Koh Cupを使用することで, 膣壁, 基靭帯切開線と尿管との距離を2㎝以上確保することができる(図1)。②  トロカーの挿入:臍輪に5㎜のブレードレストロカーをクローズド法またはダイレクト法で挿入し, 気腹を行なう。左右上前腸骨棘の3㎝内側に5㎜, その中点に5㎜(または左上腹部に5㎜)のトロカーを挿入し, 4ポートで行なう(図2)。③  膀胱腹膜の切開剥離:モノポーラーで切開を行ない, 吸引管で剥離する(図3)。④  上部靭帯の切断:円靭帯, 卵巣固有靭帯, 卵管をベッセルシーリング・システム(リガシュアTMアトラス)にて凝固切断する(図4)。尿管を確認し, 広間膜後葉を仙骨子宮靭帯付着部までモノポーラーにて切開する。⑤  膀胱剥離:吸引管を用い, 子宮頸部より剥離する。⑥  子宮動脈と尿管の同定:後腹膜腔の展開を行ない, 子宮動脈や尿管を同定する。子宮動脈は単離し, 2-0バイクリルでの結紮(図5), またはバイポーラによる凝固を行なう。尿管を子宮動脈交差部まで剥離, 視認し, 尿管損傷を防止する。これらの操作は, パワーソースの発達やKoh Cupの使用により省略が可能である。⑦  基靭帯の凝固切断:ベッセルシーリング・システム(リガシュアTMアトラス)にて凝固切断を行なう。子宮動脈の結紮(または凝固)が行なわれていない場合には, 出血が多くなりがちなので, 十分凝緒   言 近年の手術の低侵襲化は目覚ましく, 婦人科領域も例外ではない。当科では1997年より, 腹腔鏡下手術, 子宮鏡下手術を導入し, 徐々にその適応を拡大しながら現在に至っている。 子宮摘出術については, 従来の開腹, 膣式手術から, 2004年より膣式のみでは摘出が困難な症例に対し, 子宮上部靭帯の処理のみを腹腔鏡下に行ない膣式に摘出する腹腔鏡補助下膣式子宮全術 (laparoscopic assisted vaginal hysterectomy; 以下, LAVH)を導入した。 さらに, 2012年より, 子宮動脈, 基靭帯の処理, 子宮の膣管からの離断, 膣断端の縫合までをすべて腹腔鏡下に行なう, 全腹腔鏡下子宮全摘術 (total laparoscopic hysterec-tomy; 以下, TLH) を本格導入し, 標準術式にすべく努力している。 本稿では, 当科におけるTLHの現状を紹介する。対象と方法 全腹腔鏡下子宮全摘術は低侵襲の優れた術式であり, 可能な限り全腹腔鏡下に行なうことを基本方針としているが, 腹式単純子宮全摘術(abdominal total hysterectomy; 以下, ATH)と比較して尿管損傷のリスクが高いとする報告(TLH 1.3% vs ATH 0.4%)1) がある。適応を遵守し, リスクや開腹術との比較, 当科での手術成績も踏まえて十分な説明を行ない, インフォームドコンセントの得られた症例に対してTLHを行なった。2012年11月から2014年7月に施行したTLH症例20例の手術成績(手術時間, 出血量, 摘出子宮重量, 合併症など)について,2009

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